研究課題/領域番号 |
17K14662
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
川那子 高暢 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (30726633)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 自己組織化 / 先端機能デバイス / マイクロ・ナノデバイス / 表面・界面物性 / ナノ材料 |
研究実績の概要 |
平成29年度はゲート電極の仕事関数による閾値電圧制御を集中的に行った。閾値電圧を大きく正方向に移動させるために、仕事関数が5 eV以上の金属を選択した。金属材料の候補として、仕事関数が5.3 eVのPtを用いた。Ptの堆積には、プロセスダメージが比較的低い電子線蒸着装置を用いた。SiO2/Si基板上にPtを電子線蒸着によって堆積し、リフトオフプロセスによってゲート電極を作製した。電子線蒸着によって堆積したPt電極とSiO2/Si基板との密着性を向上させるためにCrを用いた。堆積したPt電極上に反応性RFスパッタリングによってゲート絶縁膜のAlOxを堆積した。アルゴンと酸素の比率を変えることで、堆積レートや被覆性、絶縁性といったプロセス条件や電気特性の最適化を行った。同時にAlOxをSiO2/Si基板上にも堆積し、MOSキャパシタを作製した。MOSキャパシタの容量-電圧特性から堆積したAlOxの膜厚を計算した。さらに、電流-電圧特性から絶縁破壊電界を調べた。AlOx上に自己組織化単分子膜を形成し、この積層ゲート絶縁膜上にMoS2 を転写し、FETの作製と閾値電圧を評価した。同時に、Alをゲート電極に用いたMoS2 FETも参照試料として作製し、閾値電圧の変化量がゲート金属の仕事関数と一致しているかを検討した。実験結果より、Pt電極によって閾値電圧0.16Vの正の値を実現することができた。参照試料のAlをゲート電極に用いたMoS2 FETと比較して、約1V程度の正側への閾値電圧シフトを観測した。これは、ゲート電極材料の仕事関数差に対応しており、ゲート金属によって閾値電圧を制御している実験的な証拠と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究プロジェクトの初年度において、既に最大の目的であった閾値電圧制御と正の閾値電圧の実現に成功することができ、当初の予想よりも非常に進展していると考えている。初年度の結果をもとに、今後は更にデバイス特性の向上やデバイス物理の理解へと展開していくことが期待できる。初年度ながら予想よりも良い結果を得ることとができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画ではRFスパッタによるAlOxをゲート絶縁膜の一部に使用する計画であったが、AlOxよりも誘電率の高いハフニウム酸化物(HfO2)も導入することを検討する。これによりゲート容量の向上による更なるデバイス特性の向上が期待できる。さらに、RFスパッタではなく原子層堆積法(ALD)によるAl2O3やHfO2の使用を計画している。ALDによるAl2O3やHfO2は、シリコン技術の発展の中で既に成熟した手法になっており、RFスパッタよりも質の高い絶縁膜を作製することができる。
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