研究課題/領域番号 |
17K14663
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
坂本 盛嗣 長岡技術科学大学, 工学研究科, 助教 (60757300)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 光渦 / 偏光渦 / 液晶 / 光配向 / 空間光制御デバイス / 高速光制御 |
研究実績の概要 |
その特異な光学的性質が注目され、近年飛躍的に応用の幅を広げている光渦の実験研究では、光渦を発生させる為の位相の空間制御デバイスが必要不可欠であり、とりわけその光制御の柔軟性・広帯域性・偏光選択性は光渦の応用の可能性を拡大する基盤要素となる。本研究の目的は、「光機能性液晶材料の多次元光配向技術」を駆使して、上述の光制御特性を併せ持つ「偏光アドレス型のアクティブ光渦発生装置」を新規に構築し、光渦の応用の可能性を拡大に寄与することである。今年度の成果は以下の通りである。 1.本研究では、偏光照射により光機能性液晶材料中に形成される3次元螺旋異方性構造体を光渦への波面変換デバイスとして採用する。まず、この螺旋異方性構造体の波面変換特性について数値解析による詳細な解析を行った。具体的には、螺旋構造の捩れ周期・最大捩れ角・全長の3つのパラメータが、発生する光渦のトポロジカルチャージ分散と変換効率に与える影響について、波長依存性を含めて系統的に解析した。結果として、約200nm帯域にわたって95%以上のモード純度を持つ光渦を50%以上の効率で生成可能な条件を見出した。 2.本研究で提案する光渦発生装置では、光機能性液晶材料中に3次元螺旋異方性構造体を形成するための偏光分布に円筒対称性を有するアドレス光が必要となる。続けて、MEMSミラーと電気光学変調器を組み合わせて、偏光と露光位置の同時高速制御を行い、3次元螺旋異方性構造体を形成する為のアドレス光を発生させる機構を新たに構築した。本機構で発生させた擬似ベクトルビームを用いて3次元螺旋異方性構造体を形成し、光渦発生の実証実験を行い、提案する偏光アドレス型アクティブ光渦発生装置の原理実証に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H29年度に計画していた「広帯域特性の発現メカニズムの解明と螺旋異方性構造の最適化」については、螺旋異方性構造の各種パラメータの依存性を系統的に調査し、広帯域性を得るのに十分な条件を明らかにしている。また、「高柔軟偏光アドレス励起の実現に向けた走査型偏光投影装置の構築」も完了し、本装置を用いた3次元螺旋異方性構造体の形成及び光渦発生の実証実験にも成功している。現在は走査型偏光投影装置の機能拡大に向けて研究を継続している。
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今後の研究の推進方策 |
H29年度に引き続き、走査型偏光投影装置の改良を進める。また、光機能性液晶材料のアドレス光に対する応答速度を高速化するために、温度制御による分子再配列速度依存性を調査する。これにより、光渦発生における実用化レベルの柔軟性・広帯域性・偏光選択性・応答速度の実現を目指す。
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