無尽蔵のエネルギー源である太陽光を活用した太陽光発電は、今後も、その重要性が増加すると考えられる。本研究では、シリコン系太陽電池のコスト低減、フレキシブル化による設置可能場所の拡大等、産業的な優位性の向上に向けて、シリコン膜厚を10~20μm級へと大幅に薄型化しつつも、高い効率を得るための基盤を築くことを目指している。そのために、光の波長オーダの周期構造を有するフォトニック結晶における大面積共振モードを活用することを検討した。平成30年度は、平成29年度に得られた円錐状フォトニック結晶を導入した試作結果を分析し、さらなる吸収の増大および、電気特性の向上に向けた検討を行った。(1)光吸収のさらなる増大に関して、フォトニック結晶の効果をさらに高める設計を検討した。多数のバンド端共振モードによる光吸収のさらなる増大のために、遺伝的アルゴリズムを活用し、自動的に構造最適化を行う手法を構築した。本手法により、700-1100nmの長波長帯域でより高い光吸収を得ることに成功し、Jph=39.07mA/cm2が得られ、200μm厚の平坦な単結晶Si太陽電池(39.07mA/cm2)に匹敵する値を得ることに成功した。(2)電気的特性(開放電圧や曲線因子)の向上に向けた検討として、薄膜太陽電池構造の作製法を検討した。表面再結合や,電極・ドープ領域での再結合等、開放時のキャリア損失パスを抑制するため、ドープ領域の形成法と条件・コンタクト部分の電極材料の選定等を行った。イオン注入によるダメージがキャリア寿命の低下を生じさせていることや、電極材料としてSiと混晶を生じないTi/Agが適していることなどを見出し、Voc=0.615V、FF=0.758という、良好な特性を得ることができた。以上を通じて、これまでの結果を総合的に実現することで、~17%以上の効率が期待できることを示した。
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