味覚センサは,溶液に脂質高分子膜電極を浸漬し,味溶液との相互作用に起因した膜電位変化を計測することで,食品・医薬品の味強度を計測するものである.本研究では従来のシステムを変更し,フローインジェクション式の膜電位計測システムを実現することで,味物質と脂質高分子膜の相互作用を経時的に検出する新しい味覚センサの開発を目的とした.本年度は,昨年度に試作したフローインジェクション式の味覚センサの評価を行った.試作したセンサは,スライドガラス上にパターニングした電極を用い,電解質ゲルとPDMS流路を積層し,シリンジポンプで送液するシステムを構築した.基本味サンプル溶液に対して,従来の味覚センサと同様の選択性及び,センサ応答を有することや膜電位の経時変化を計測できることが分かった.一方,吸着性の高いサンプルや食品サンプル測定に対しては,測定後の脂質高分子膜表面の洗浄に関して課題が見つかった.そのため繰り返し測定の精度を向上させる必要が生じたが,洗浄液の組成,送液量,流速等の最適化を行った結果,解決の目途が立った.また,測定サンプルの必要量を数十micro Lとすることで,医薬品といった貴重な測定サンプルでも対応できることを目標の一つとしていた.しかしながら,現在のところセンサの応答感度の観点から実現には至らなかった.今後は,流路の微細化と脂質高分子膜の微細な修飾方法を確立することで改善を試みる予定である.
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