超伝導検出器を用いた単一光子検出器を多素子化・アレイ化し、超高感度かつ分光可能な大型カメラを実現する多素子読み出しを開発する。超伝導転移端センサは、光子を高い効率(> 98%)で検出できる一方、応答が速い(時定数< 1us)ために多素子を読み出すのが困難であった。本研究では、この高速応答を逆手に取る。光子による信号の立ち上がりのみをフィルタによって取り出す、これまでにない方式の読み出しを開発する。この方式では、超伝導転移端センサーでは不可能と考えられてきた二次元読み出しを実現できる可能性がある。 2017年度に回路シミュレーションを行い、LCRフィルタ(インダクター、抵抗、コンデンサからなるフィルタ)を用いることに決定した。2018年度は、シミュレーションから得られた静電容量、抵抗およびインダクタンスを提供する回路素子の選定を行なった。極低温(4K)で性能評価を行い、期待通りの性能が得られることを確認した。2019年度は新規読み出し回路とセンサーの統合試験を行った。これと平行して、アレイ化に向けて9素子アレイを製作し、正常に動作することを確認した。熱的なクロストーク等の評価を行い、問題ないことも示した。 本研究では10MHz前後の信号を読み出すため、通常の極低温実験に用いるケーブルでは読み出すことが難しいことが判明した。そこで、極低温で動作する超伝導同軸ケーブルを導入し、センサーの高周波応答を測定し、読み出しが成功していることを実証するとともに理論と一致することを示した。今後はこれらの要素技術を組み合わせて、9素子アレイの読み出し試験を行う。
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