研究実績の概要 |
平成29年度は, 無線全二重通信ネットワークの理論解析において基幹部分となる無線全二重通信MACの動作のモデル化を中心に研究を進めた. また, ネットワーク層のモデル化では, 無線全二重通信MACの基本的な動作をモデル化したうえで, それらの端末がネットワークとして結合したときのネットワークのスループットおよび遅延特性への影響を明らかにした. その成果を国際会議, 国内研究会に発表を行った. 平成29年度の助成金は, 計算用ソフトウェアおよび計算機, ネットワーク実験における実験消耗品, 主に国内/海外発表のための旅費に当てられた. 1. 無線LANを解析対象として, 無線全二重MAC層の動作のモデル化を行い, 任意の負荷およびMAC層の制御パラメータに対するスループットおよび遅延解析モデルへと発展させることに成功した. 2. 1で得られた無線全二重MAC層の動作のモデル化を用いて, 基本的なネットワークである直線状マルチホップネットワークにおいて, 隠れ端末による衝突の影響のもとでのスループットおよび遅延解析モデルへ発展させることに成功した. すでに得られている半二重通信のマルチホップネットワークとの理論解析モデルとの比較により, 無線全二重通信によるネットワークのスループット特性への影響を理論的に明らかにすることに成功した. 1および2の成果は本研究の基幹部分であるが, 現段階ではその適用範囲は限定的である. そのため, 今後はこれらのモデルを基にさらに一般的なモデルへと発展させていく.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では, 基幹部分となるMAC層の解析のモデル化から上位レイヤへと解析を進めていく. そのうち, MAC層のモデル化と基本的なネットワーク層のモデル化まで行った. これにより, 次年度よりトランスポート層のモデル化, ネットワークトポロジによらない解析, 解析モデルからのMACプロトコルの提案に進むことができる. これらの成果から, 研究計画はおおむね順調に進展していると結論づけられる.
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今後の研究の推進方策 |
29年度に得られた, 基幹部分となるMAC層のモデルとネットワーク層のモデル化を用いて, 30年度はトランスポート層のモデル化, ネットワークトポロジによらない解析を中心に行う. トランスポート層の最も基本的な動作である双方向の非対称なトラフィックの全二重通信ネットワークへの適用を理論解析モデルを確立することで明らかにする. また, ネットワークトポロジに制限されない解析手法を確立するために, 各端末が近隣端末から受ける送信禁止状態などをモデル化する必要がある. このために, グラフ理論を積極的に応用していく.
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