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2017 年度 実施状況報告書

光ファイバを用いた外部音響インピーダンスの分布センシング

研究課題

研究課題/領域番号 17K14692
研究機関東京大学

研究代表者

林 寧生  東京大学, 先端科学技術研究センター, 特別研究員 (90786683)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2019-03-31
キーワード非線形光学 / ブリルアン散乱光 / 光ファイバセンサ
研究実績の概要

本年度の当初の予定では、(1) 導波音響波型ブリルアン散乱光の音響インピーダンス依存性の理論面の考察を行った後、(2) 従来の分布測定手法である時間領域法・相関領域法の適用を試みた後、信号対雑音比の向上のためにブリルアン散乱のランダムな時間変動特性を利用し、信号対雑音比の向上に挑戦する予定であった。
実際の予定では、(1)に関しては、マルチコアファイバ中のデポラライズドGAWBSを観測し、さらに各コア間の音響波の相互作用について検証した。今回、サイドコア中のGAWBSを初観測し、各コア間の音響波間に相互作用がないことを実証した。これは、音響インピーダンス依存性の理論面(音響波の境界問題を含む)の解明に役立つだけでなく、誘導GAWBSと自然GAWBSの使い分けによって光ファイバ中の情報をコントロールするという新たな光ファイバ応用分野(光ファイバ網オペレーションシステム(FOOS))の開拓可能性を示唆する有意義な結果である。また、周方向における一部分の被覆を除去した光ファイバのGASWBSの観測および特性評価を行った。音響インピーダンスセンシングに用いる場合、被覆を全て除去しているため、センサ自体の強度に問題があった。そこで、周方向における一部の被覆を除去することにより、強度とセンシング感度を両立した。
(2)に関しては、多段前方ブリルアン散乱光が後方誘導ブリルアン散乱光をシードとして発生するという新たな現象を初観測した。これは、従来の分布測定手法と音響インピーダンスセンシングを結びつける"接続点”の役割を果たす現象である。これと相関領域法を用いて温度と音響インピーダンスの分布測定に成功した。なお、この現象は高いSNRを誇るため、RS解析を用いたSNR改善手法の適用なしでも十分測定が可能である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当初は、分布測定時に長い測定時間を要するRS解析を周波数ごとに行う計画であったが、高強度の音響導波型ブリルアン散乱光が後方誘導ブリルアン散乱光をシードとして生じる新たな現象を発見し、これを用いることで、瞬時に分布測定が可能となることを実証した。これは、測定時間の短縮といった点で、シンプルながらも大きな進展である。
また、マルチコアファイバ中のデポラライズドGAWBSを観測し、さらに各コア間の音響波の相互作用について検証した。今回、サイドコア中のGAWBSを初観測し、各コア間の音響波間に相互作用がないことを実証した。これは、音響インピーダンス依存性の理論面(音響波の境界問題を含む)の解明に役立つだけでなく、誘導GAWBSと自然GAWBSの使い分けによって光ファイバ中の情報をコントロールするという新たな光ファイバ応用分野(Fiber-optic operation system(FOOS))の開拓可能性を示唆する有意義な結果である。

今後の研究の推進方策

音響導波型ブリルアン散乱光の分布を用いた更なる応用に着手する。具体的な計画を以下に示す。
各種応用に向けた光ファイバの加工および選定
① 地球内部測定に向けた高強度炭素皮膜の付与:光ファイバを音響インピーダンスセンサとして用いる場合、光ファイバの表面にあるポリマー被覆を除去する必要がある。ただし、この除去により、ファイバはもろくなる。そこで、光ファイバの長手方向の一部分を残し、丈夫な炭素被服を付加したファイバを作製する。その後、音響インピーダンスの分布測定の実証を行う。
② 体内使用に向けたポリマー光ファイバの使用:高い柔軟性を有するポリマー光ファイバ中のGABWSはそもそも観測されていないため、これを観測する。ポリマー材料中の音響波の減衰量はガラスのそれに比べ大きい。そこで、GAWBSの強度を大きくするためにファイバ径を小さくする必要がある。そこで、ポリマー材料の表面の被服層をクロロホルムで除去しさらにポリマー光ファイバはマルチモードのみしか存在しないため、テーパー加工でシングルモードにした後、ポリマー光ファイバ中のGABWBSの音響インピーダンス依存性を測定する。
③ 水分センサへの応用に向けた吸水性ポリマーの付与:水分によっても音響インピーダンスが変化するため、これを利用した水分センサへの応用可能性が見込める。ただし、通常の水分はその表面張力によって、ファイバ表面で球体となってしまい。均一な測定が困難である。そこで、吸水性ポリマーをファイバ全面に塗布することによって、均一性を保つことを提案する。吸水性ポリマーを塗布する技術の開発した後、水分依存性を取得する。
④ 電磁波センシングに向けた特殊メッキ加工:電気粘性流体や磁気粘性流体をファイバの周りに塗布する手法がないためこれを開発する。その後、塗布したファイバの各物理量が変化したときの音響インピーダンス変化を測定する。

  • 研究成果

    (19件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 6件、 招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Observation of depolarized guided acoustic-wave Brillouin scattering in partially uncoated optical fibers2018

    • 著者名/発表者名
      Neisei Hayashi, Sze Yun Set, and Shinji Yamashita
    • 雑誌名

      Japanese Journal of Applied Physics

      巻: 57 ページ: 020307-1-2

    • DOI

      https://doi.org/10.7567/JJAP.57.020307

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Fiber-optic cascaded forward Brillouin scattering seeded by backward stimulated Brillouin scattering: conceptual proposal and experimental validation2018

    • 著者名/発表者名
      Neisei Hayashi, Yosuke Mizuno, Kentaro Nakamura, Sze Yun Set, Shinji Yamashita
    • 雑誌名

      arXiv of Cornell University Library

      巻: 1804 ページ: 00452

    • DOI

      arXiv:1804.00452

  • [雑誌論文] Temperature coefficient of sideband frequency produced by polarized guided acoustic-wave Brillouin scattering in highly nonlinear fibers2017

    • 著者名/発表者名
      Neisei Hayashi, Kohei Suzuki, Sze Yun Set and Shinji Yamashita
    • 雑誌名

      Applied Physics Express

      巻: 10 ページ: 092501-1-3

    • DOI

      https://doi.org/10.7567/APEX.10.092501

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Single-end-access distributed strain sensing with wide dynamic range using higher-speed Brillouin optical correlation-domain reflectometry2017

    • 著者名/発表者名
      Yosuke Mizuno, Neisei Hayashi, Hideyuki Fukuda, Kentaro Nakamura
    • 雑誌名

      Japanese Journal of Applied Physics

      巻: 56 ページ: 072501-1-6

    • DOI

      http://iopscience.iop.org/article/10.7567/JJAP.56.072501/meta

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Fiber-optic cascaded forward Brillouin scattering seeded by backward SBS2018

    • 著者名/発表者名
      Neisei Hayashi, Yosuke Mizuno, Kentaro Nakamura, Sze Yun Set, Shinji Yamashita
    • 学会等名
      CLEO2018
    • 国際学会
  • [学会発表] 光ファイバ中の非線形散乱光を用いた楽器の提案2018

    • 著者名/発表者名
      Neisei Hayashi, Sze Yun Set, Shinji Yamashita
    • 学会等名
      2018年電子情報通信学会総合大会
  • [学会発表] 後方誘導ブリルアン散乱光をシードとして用いた多段前方ブリルアン散乱光の発生-概念の提案と実験的観測および音響インピーダンスの分布測定への応用-2018

    • 著者名/発表者名
      Neisei Hayashi, Yosuke Mizuno, Kentaro Nakamura, Sze Yun Set, Shinji Yamashita
    • 学会等名
      電子情報通信学会2016年度第9回光エレクトロニクス研究会(OPE)講演論文集
  • [学会発表] Experimental observation of depolarized GAWBS in partially uncoated optical fibre2017

    • 著者名/発表者名
      Neisei Hayashi, Sze Yun Set, Shinji Yamashita
    • 学会等名
      22nd microoptics conference (MOC 2017) [Post dead]
    • 国際学会
  • [学会発表] Fiber-optic guided acoustic-wave Brillouin scattering properties and sensing application2017

    • 著者名/発表者名
      Neisei Hayashi, Yosuke Mizuno, Kentaro Nakamura, Sze Yun Set, Shinji Yamashita
    • 学会等名
      25th International Conference on Advanced Laser Technologies (ALT 2017)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Observation of spontaneous depolarized GAWBS in multi-core fibers2017

    • 著者名/発表者名
      Neisei Hayashi, Sze Yun Set, Shinji Yamashita
    • 学会等名
      The 24th congress of the international commission for optics (ICO24)
    • 国際学会
  • [学会発表] Temperature dependence of polarized GAWBS spectrum in high nonlinear fibers2017

    • 著者名/発表者名
      Neisei Hayashi, Kouhei Suzuki, Sze Yun Set, Shinji Yamashita
    • 学会等名
      In CLEO: Science and Innovations, Optical Society of America
    • 国際学会
  • [学会発表] Characterization of depolarized GAWBS for optomechanical sensing of liquids outside standard fibers2017

    • 著者名/発表者名
      Neisei Hayashi, Sze Yun Set, Shinji Yamashita
    • 学会等名
      25th International Conference on Optical Fiber Sensors (OFS-25)
    • 国際学会
  • [学会発表] 後方誘導ブリルアン散乱光をポンプ光として用いた誘導ポラライズドGAWBSの観測2017

    • 著者名/発表者名
      Neisei Hayashi, Yosuke Mizuno, Kentaro Nakamura, Sze Yun Set, Shinji Yamashita
    • 学会等名
      第78回応用物理学会秋季学術講演会
  • [学会発表] マルチコアファイバ中の自然デポラライズドGAWBSの観測とその特性解明2017

    • 著者名/発表者名
      Neisei Hayashi, Sze Yun Set, Shinji Yamashita
    • 学会等名
      第78回応用物理学会秋季学術講演会
  • [学会発表] 高非線形光ファイバ中の導波音響波型ブリルアン散乱光スペクトルの温度依存性2017

    • 著者名/発表者名
      Neisei Hayashi, Kouhei Suzuki, Sze Yun Set, Shinji Yamashita
    • 学会等名
      第64回応用物理学会春季学術講演会
  • [学会発表] 非線形ファイバ中のポラライズド導波音響波型ブリルアン散乱光の温度依存性2017

    • 著者名/発表者名
      Neisei Hayashi, Sze Yun Set, Shinji Yamashita
    • 学会等名
      応用物理学会第59回光波センシング技術研究会(LST-59)講演論文集
  • [学会発表] マルチコアファイバ中の自然デポラライズド導波音響波型ブリルアン散乱光の観測2017

    • 著者名/発表者名
      Neisei Hayashi, Sze Yun Set, Shinji Yamashita
    • 学会等名
      応用物理学会第59回光波センシング技術研究会(LST-59)講演論文集
  • [学会発表] 後方 SBS をシードとして用いた光ファイバ中の多段前方ブリルアン散乱の観測2017

    • 著者名/発表者名
      Neisei Hayashi, Yosuke Mizuno, Kentaro Nakamura, Sze Yun Set, Shinji Yamashita
    • 学会等名
      応用物理学会第60回光波センシング技術研究会(LST-60)講演論文集
  • [図書] Opto-Mechanical Fiber Optic Sensors: Research, Technology, and Applications in Mechanical Sensing2018

    • 著者名/発表者名
      Y. Mizuno, N. Hayashi, and K. Nakamura
    • 総ページ数
      358
    • 出版者
      Elsevier
    • ISBN
      9780128031315

URL: 

公開日: 2018-12-17  

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