研究課題/領域番号 |
17K14693
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
大多 哲史 静岡大学, 工学部, 助教 (30774749)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 磁性ナノ粒子 / 磁気粒子イメージング / 磁気緩和 / 磁化曲線 |
研究実績の概要 |
磁気粒子イメージング(Magnetic particle imaging: MPI)とは、体内における磁性ナノ粒子のモニタリングを可能とするため、次世代の画像診断技術として期待されている。MPIは磁気共鳴画像法(MRI)よりも高感度で陽電子断層撮影法(PET)よりも高解像度であり、さらに高速撮影が可能であるという点で画期的である。MPIにおける画像解像度や感度の向上策の一つとして、比較的低磁場でも高い信号強度を示すような、磁性ナノ粒子の磁化特性に関わる改善が挙げられる。MPIでは高調波信号を計測することで、粒子の位置検出や画像再構成を行っている。本研究では、高調波信号強度の向上を目指した粒径等の粒子パラメータを設計するために、磁性ナノ粒子の磁気緩和機構の解明を目的とした。以下に平成29年度に実施した研究及び得られた成果を示す。 (1)液中に粒子を分散させた際に生じるブラウン緩和が、磁化の緩和時間であるネール緩和に対して長い場合にも、ブラウン緩和過程が生じていることを、交流磁化曲線計測から実験的に示した。 (2)従来は粒子の容易軸回転を実験的に観測することは困難であった。しかし本研究では、容易軸の回転が生じる液中試料と容易軸が固定されている固体試料の磁化信号の差を取ることで、容易軸回転に関わる情報を実験的に観測可能にする画期的な手法を示した。 (3)Landau-Lishetz-Gilbert方程式を用いて、磁性ナノ粒子の磁化及び容易軸回転の数値解析に着手した。実験的には観測できない特定の磁場条件における磁化分布の解析に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、磁性ナノ粒子の交流磁化曲線の実測を基盤とした計測と数値シミュレーションを並行で行い、粒子パラメータに対応した磁化特性を解析することで、磁気粒子イメージングへの応用を目指した磁性ナノ粒子の磁気緩和機構のモデル化に成功し、実測を反映した理論モデルの構築にも着手できたため。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間2年目に当たる平成30年度は、平成29年度に着手した数値計算モデルの構築と実測の比較による、磁性ナノ粒子の磁気緩和機構のモデル化を深化させる。具体的には、ネール緩和過程とブラウン緩和過程における磁化と容易軸の磁場に対する応答として、回転角度や位相差に注目する。また一般的に複数粒子の磁化信号の総和を一つの系として磁化が観測されるが、粒子の磁化機構を詳細に観測するために単一の粒子に注目したモデル構築も行う。
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