研究課題
磁気粒子イメージング(Magnetic particle imaging: MPI)とは、体内における磁性ナノ粒子のモニタリングを可能とするため、次世代の画像診断技術として期待されている。MPIは磁気共鳴画像法(MRI)よりも高感度で陽電子断層撮影法(PET)よりも高解像度であり、さらに高速撮影が可能であるという点で画期的である。MPIにおける画像解像度や感度の向上策の一つとして、比較的低磁場でも高い信号強度を示すような、磁性ナノ粒子の磁化特性に関わる改善が挙げられる。MPIでは高調波信号を計測することで、粒子の位置検出や画像再構成を行っている。本研究では、高調波信号強度の向上を目指した粒径等の粒子パラメータを設計するために、磁性ナノ粒子の磁気緩和機構の解明を目的とした。以下に2018年度に実施した研究及び得られた成果を示す。(1)磁気粒子イメージングにおいて、有効とされるマルチコア構造の粒子実効的パラメータを数値シミュレーションと実測のフィッティングにより解明した。(2)単一粒子の磁化、及び容易軸の磁場に対する応答を数値シミュレーションにより観測して、コア粒径と異方性の磁化ダイナミクスに対する依存性を示した。従来の磁化曲線では、平均的な磁気特性の観測に留まっていたが、単一粒子に注目することで、特に液体中において、異方性が増加することによる容易軸回転の磁化回転への追随が、磁化増加に起因していることを解明した。(3)鎖状構造を持つ粒子は、双極子相互作用によって実効的に一軸異方性が増加し、液体状態において、大きな高調波強度を示すことを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、磁性ナノ粒子の交流磁化曲線の実測を基盤とした計測と数値シミュレーションを並行で行った。粒子パラメータの磁化ダイナミクスへの依存性を解明することで、磁気粒子イメージングの発展に有効な粒子パラメータを解明したため。
研究期間最終年度に当たる2019年度は、生体内を模擬した試料を計測することで、実用に即した状態での磁性ナノ粒子の磁化特性計測を行う。また数値シミュレーションによるフィッティングを行うことで、実測に基づいた粒子パラメータの解析を引き続き行う。
すべて 2019 2018 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (20件) (うち国際学会 11件、 招待講演 4件) 備考 (1件)
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