研究課題/領域番号 |
17K14699
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
若生 将史 神戸大学, システム情報学研究科, 講師 (50778587)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 制御システム / セキュリティ / オブザーバ |
研究実績の概要 |
平成29年度は,サイバー攻撃に対して頑強な制御系の設計について,以下の2つの成果を得ることができた. (1)サイバー攻撃によって測定データの一部が改ざんされたシナリオを想定し,このようなサイバー攻撃に対して頑強な制御アルゴリズムを考案した.このアルゴリズムの特徴は2つある.1つ目は,攻撃検出のためにオブザーバの群を構成する代わりに,それらをサイズの大きい1つのオブザーバに縮約した点である.これにより計算メモリを大幅に節約することが可能になった.2つ目は攻撃検出の制御問題を充足可能性(SMT)問題に帰着させることで,SMTソルバを活用した点である.その結果,低い計算量で迅速に攻撃検出が可能になった.この結果は学術論文誌ACM Transactions on Cyber-Physical Systemsに採択された. (2)コンピュータシステムに対するマルチレイヤーのサイバー攻撃をオートマトン上で表現し,そのような攻撃のもとでも仕様を達成するための制御則を考案した.この問題は,サイバー攻撃がない古典的なスーパバイザ制御問題に帰着されるケースも多いが,制御対象のシステムの規模が多い場合には,システムの変形に多くの計算量が必要となる.加えて,スーパバイザを設計する際に,サイバー攻撃の種類に関して指数的に計算量が増加してしまうという問題点がある.これに対して,提案手法では(1)で得た知見を活用することで,スーパバイザ設計における計算量をサイバー攻撃の種類の2乗に抑えることができ,従来よりも少ない計算量でサイバー攻撃に頑強なスーパバイザを設計することができるようになった.この結果は現在,学術論文誌で査読中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は,制御対象が線形時不変システムと離散事象システムである場合について,サイバー攻撃に対して頑強な制御系を設計することができた.近年,サイバー攻撃を想定した制御手法の研究は数多くなされているが,提案手法のようにオンライン計算量や設計のための計算量を考慮した研究は少ない.計算量について研究計画段階はあまり重要視していなかったものの,応用するうえで計算量の議論は必須であることから,当該年度に行った.そして期待通りの結果を得ることができた.
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り,平成29年度で得た結果をハイブリッドシステムに拡張することを考える.また,サイバー攻撃としてDenial of Serviceを取り扱い,Denial of Serviceの存在下でのハイブリッドシステムの安定化について研究することも検討している.Denial of Serviceとはネットワークのリソースに意図的に過剰な負荷をかけることで可用性を侵害するサイバー攻撃である.Denial of Serviceはデータの改ざんと異なり,攻撃者が制御システムに関する情報を詳しく知る必要がないため,実行しやすい攻撃であるといえる.Denial of Serviceの下での制御システムをハイブリッドシステムの1種である切替システムとみなすことで,閉ループシステムの安定性解析を行うことができると考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度中の海外出張の回数が当初の計画より少なくなったため. 平成30年度は5月にIEEE International Conference on Communications(カンザスシティ),6月にAmerican Control Conference(ミルウォーキー),9月にSICE Annual Conference(奈良)で研究発表を行うことが決定しており,それらを含め,年度を通じて700,000円程度を旅費と学会参加費に使用することを計画している.残額は,数値計算用のコンピュータの購入と論文のオープンアクセス化のための費用とする.
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