研究課題/領域番号 |
17K14700
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
細江 陽平 京都大学, 工学研究科, 助教 (50726411)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 制御工学 / 確率系 / 線形行列不等式 / ランダムダイナミクス / リアプノフ不等式 / ランダム行列 |
研究実績の概要 |
本研究では,動特性が確率的に定まるような離散時間線形確率系を対象とした制御理論の整備と高度化に取り組んでいる.本研究で扱う確率系の内部状態の遷移は,係数行列がランダム行列で与えられる状態方程式によって記述される.また,そのランダム行列が時間に関して独立同分布に従う場合には,対応する系の安定性を特徴づける条件式(リアプノフ不等式と呼ばれる)を比較的容易に導出できることが明らかになっている. 本年度は主として,その安定条件を,ランダム行列が時間に関して独立同分布に従うのではなく,マルコフ性をもつ場合にも扱えるものに拡張することについて検討した.マルコフ性をもつ確率過程(すなわちマルコフ過程)は現時刻での値のみに依存して次時刻の条件付き分布が定まる.よって,安定条件を導出する際に通常の期待値操作を用いるのではなく,条件付き期待値を用いることを考えれば,その性質を活用できる可能性がある.そのような考え方に基づいて条件式の形やその変形等について検討を重ね,最終的にマルコフ過程依存の確率系に対する安定条件を導出することに成功した.また,確率系の動特性を決めるランダム行列がランダムポリトープで表される不確かさをもつ場合に,上記安定条件をロバスト安定条件へ拡張できることを示した.そのロバスト安定条件はロバスト安定化制御器設計のための条件式へさらに拡張することが可能である.これらの成果より,より広いクラスの確率系に対して,ロバスト安定解析や制御器設計を行うことが可能になった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は当初の計画通り,主としてマルコフ過程依存の確率系に対するロバスト安定条件の導出に取り組み,期待通りの成果を得た.なお,本成果は国際会議でのみ既発表であり,学術誌へはまだ未投稿であるが,本成果に関連して当初計画になかった興味深い結果が得られており,併せて論じることが極めて効果的であると考えている.よって,学術誌への投稿に関してはもう少し時間をかけて理論全体を精査してから行う予定である.
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は,当初の計画通りロバストH2性能制御器設計手法の確立に取り組む.また,「現在までの進捗状況」で述べた未発表の結果の周辺に関しても精査し,提案する制御理論の普遍的価値の向上を目指す.
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題にかかる国際共同研究のため短期間渡仏する予定であったが,電子メールベースの打ち合わせのみで研究が順調に進展したため,初年度の渡仏は見送った.次年度は同共同研究のために長期でフランスに滞在する予定であるので,次年度使用額についてはその滞在費に使用する.
|