研究課題/領域番号 |
17K14704
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
井上 正樹 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 講師 (80725680)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | モデルセットベース制御 / ロバスト制御 / 電力系統制御 / 航空管制制御 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,大規模複雑化した動的システムを定量的に解析し設計するための基礎理論を構築する.この目的のもと,動的システムを従来の詳細なモデルではなくモデル集合の元として記述し,そのモデル集合のもとで理論展開することを狙いとしている.この狙いのもと,平成30年度は以下の3つの成果を挙げることができた.これらの成果は2編の雑誌論文誌と2編の査読付き国際会議論文に掲載済みか掲載決定している.また,1件の招待講演を含む4件の国内会議口頭発表もおこなった. 3つの成果の詳細を以下に記す. 1)29年度に提案した性能パラメータ付きの受動性の考え方のもと,ネットワーク 結合系の定量解析をおこなった.ネットワークの結合構造と定量的な外乱抑制性能の関係をあきらかにした。また,パラメータに周波数特性を導入することで,定数パラメータの場合よりも保守性の低い解析や設計を可能とした.この解析や設計方策は電力系統の解析や設計論に応用した。 2)29年度に提案した大規模系に対するアドオン型の制御方策のもとで達成できる制御系の性質をあきらかにした。特に,モデル不確かさの増大に対する制御性能の劣化のしにくさをあらわす「パーシステンス」という定義を提案し,大規模制御系の定量解析をおこなった。 3)本研究課題で取り扱うモデル集合や集合値信号の考え方を,人の意思決定が制御ループに内在する系(Human-in-the-loop Systems)に対する制御問題に応用展開した.特に実応用としてパイロットの意思決定を含む航空管制システムとのつながりを発見し、応用展開をはかった.この応用例はもとの研究計画では考えていなかったものである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究目的であった性能パラメータ付き受動性に基づく大規模複雑系の解析・設計理論の開発を予定通りまとめることができた.これらの研究進捗状況に加えて,一般の Human-in-the-loop Systems の制御方策や航空管制システムの設計方策への応用展開をはかることができたため,当初の計画以上に研究をすすめることができたといえる.また,本研究課題について国外の研究者との共同研究も開始できたため,今後の研究をすすめやすくなったことも進捗状況として報告したい.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度の平成31年度には,30年度までの設計方策を海外研究者と連携しながら大規模複雑系のボトムアップ設計論としてまとめる.そして,電力系統の解析や制御だけではなく,30年度に新しく得られた Human-in-the-loop Systems や航空管制システムへの応用展開を進める予定である.
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