研究課題/領域番号 |
17K14723
|
研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
荒木 裕行 中央大学, 理工学部, 助教 (30780837)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 埋設管 / 蛇籠 / ジオテキスタイル / スラスト力 |
研究実績の概要 |
本課題では,地中埋設管の屈曲部に生じるスラスト力による埋設管の不安定化を防止するための新たなスラスト力防護対策として,土嚢型受圧体を埋設管側部に設置する手法を提案する.特に,地震外力等を受けて地盤内に過剰間隙水圧が生じた場合には地盤の抵抗力が低下して埋設管の変位が生じ易くなる.そこで,動水勾配を与えることで抵抗力の低下した地盤を再現し,その地盤内でスラスト力を模擬した水平力を埋設管に作用させる模型実験を通じて提案対策の効果について検討を行う.土嚢受圧体は砕石をジオテキスタイルで包んだものであり,本年度はこの土嚢受圧体の寸法および設置位置に着目した実験を行った. まず,模型地盤に作用させる動水勾配を変化させながら模型地盤の貫入抵抗を計測することで,動水勾配と地盤の貫入抵抗との関係を得,抵抗力の低下した模型地盤が再現できていることを確認した.次に,土嚢受圧体の有無に関する模型実験を実施した.土嚢受圧体を設けた実験では土嚢受圧体の高さは一定として,土嚢受圧体の底面深度を埋設管と一致させたケースと,土嚢受圧体の底面深度を埋設管よりも深い位置としたケース,すなわち根入れを行ったケースを設定した.いずれの対策ケースにおいても無対策ケースと比較すると埋設管の水平変位は大幅に抑制された.この対策効果の要因は受圧面積の拡大および埋設管近傍地盤の局所的な変形を抑制可能な点にあると考えられる.また,対策ケースにおいては根入れを行ったケースの方が埋設管の変位抑制効果が高まることが明らかになった.この結果は根入れの重要性を示すとともに,土嚢受圧体の高さについては単に受圧面積の拡大効果のみを考えるのではなく根入れの可否についてもあわせて考慮すべきことを示している.このほか,土嚢受圧体の幅を変えた対策ケースについても実施することで土嚢受圧体の寸法と対策効果の関係を示す基礎データを得た.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度には主として土嚢受圧体の幅に着目した複数ケースの実験を予定通り実施することで,土嚢受圧体の寸法と対策効果の関係を示す基礎データの取得ができた.また,実験結果を踏まえ,当初計画では次年度で行う予定であった土嚢受圧体の設置位置に関する検討の一部を先行して実施し,土嚢受圧体の設置に当たっては設置深度が重要である知見を見出した.埋設管の模型実験に関する装置の改良および地盤の剛性を評価するための実験装置の作製については当初計画よりも時間を要したものの既に稼働状態にある.よって,概ね順調に実施できていると判断する.
|
今後の研究の推進方策 |
平成30年度においても平成29年度に引き続いて模型実験を実施する.一部先行的に実施した実験ケースもあるものの,平成30年度には土嚢受圧体の条件等を変更した残りの実験ケースを実施する.特に,平成29年度に見出した根入れの重要性を踏まえて,土嚢受圧体の寸法および設置位置に関する実験条件の設定を行う予定である.そして,一連の実験結果に基づき,土嚢受圧体によって得られる対策効果について埋設管の変位と地盤の性状の関係に着目したとりまとめを行い,スラスト力防護対策としての土嚢受圧体の性能について明らかにする.得られた知見については学会および論文集等に発表を行う予定である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
論文投稿に係る経費の請求時期が想定よりも遅かったこと,本年度は想定していたよりも出張費を抑えることができたことから,次年度使用額が生じた.論文投稿費用については確定した後に速やかに執行する.また,次年度予定している学会出張等の旅費に充てる予定である.
|