水位予測の入力情報となる降雨の時空間分布データを大量アンサンブル気候データの力学的ダウンスケーリングにより作成し、自己組織化マップにより大雨をもたらす気象場および各気象場の降雨の特徴を分類した。これにより過去の気候で発生した大雨イベントに占める気象要因の頻度および各気象要因の降雨の時空間的な特徴を把握した。また、温暖化進行後の気候においても同様の分析を実施し、気候変動後における大雨要因の変化および降雨の変化を把握した。さらに、大量アンサンブルデータを用いて台風の位置と流域での降雨強度の関係性を明らかにした。このような関係性は過去数十年の観測からではサンプル数の不足により分析が難しいが5kmに力学的ダウンスケーリングした大量アンサンブルデータを用いることで把握可能となった。これにより、台風が侵入した際に支川流域で大雨をもたらす場所を把握することが可能となった。また、温暖化進行後のデータとの比較により、大雨の増加量の支川流域ごとの相違を把握するとともに降雨量が顕著に増大する支川流域が存在することを明らかとした。降雨パターンによって決まる各支川の流量ハイドログラフが洪水流に与える影響を過去の洪水事例に基づいて検証し、降雨パターンの影響の大きさの空間分布を把握した。今後、大量アンサンブルデータから明らかにした流域での降雨の特徴と流域が有する本支川の流量ハイドログラフに対する流量の応答特性とをデータ同化手法を介して組み合わせることにより、水位予測の発展の可能性が見込まれる。
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