研究課題
感潮域では淡水が海水と混合すると静電気力のパラメータの一つであるイオン強度が増加して電気二重層を薄くするため,土粒子と有機物が結合(フロック化)し,沈降速度を速めて堆積している.感潮域における有機泥の循環の解明には電気化学的な要因を無視することはできない.本研究では,海底堆積泥を対象として強制的に吸着するイオンや間隙水のイオン濃度を変化させ,有機泥の表面電位(ゼータ電位)と有機泥に吸着している陽イオンの種類と濃度,沈降速度を測定し,静電気力と沈降速度の関係を明らかにした.実験においては,NaCl,CaCl2,AlCl3溶液に海底堆積泥を入れて撹拌することで,強制的にNa,Ca,Alイオンが多く吸着した有機泥を作製し,沈降速度を測定するための沈降実験とゼータ電位の測定を実施した.ゼータ電位の測定時には純水だけでなく,イオン強度を0.02,0.1,0.6 mol/Lに変化させた溶液を用いることで,吸着イオンとイオン強度を変化させた条件でのゼータ電位を測定した.採取状態の底泥のゼータ電位は純水で測定すると-40 mV程度であるが,アルミニウムイオンやカルシウムイオンが吸着した泥のゼータ電位は純水で測定するとそれぞれ+30 mV,-30 mVとなり,ゼータ電位が増加した.また,吸着陽イオンが同じ泥でも溶液のイオン強度が増加するとゼータ電位が増加した.沈降実験から得られた沈降速度とゼータ電位の関係から,ゼータ電位の絶対値が小さくなると凝集性が高くなることがわかった.また,ゼータ電位は吸着陽イオンと溶液のイオン強度の両方の影響を受けて変化しており,溶液のイオン強度を変化させることでイオン強度と吸着イオンの効果を含んだ沈降速度を推定可能であることがわかった.
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土木学会論文集B2(海岸工学)
巻: Vol.74, No.2 ページ: 1177-1182
https://doi.org/10.2208/kaigan.74.I_1177
巻: Vol.74, No.2 ページ: 1171-1176
https://doi.org/10.2208/kaigan.74.I_1171