研究実績の概要 |
本応募課題の目的は,進化ゲーム理論分野の確率的進化ダイナミクスの理論にもとづき,空間経済モデルの構造および特性を統一的に理解しうる新しい汎用的分析フレームワークを構築し,モデル群を体系化することである.この目的を達成するため,2017年度は Phase 1 として単一空間スケール・単一立地主体モデルの分析(方法論の構築)を実行した. Step 1 として,まず,確率安定性解析手法の整理と具体的モデルへの適用として,Social Interaction (SI) 型の都市経済モデル (e.g., Beckmann, 1976; Mossay and Picard, 2011) を一般化することにより定式化した.この際,応募者による先行研究で明らかとなった2つの典型的モデル・クラスを代表可能なよう,それぞれに対応する2種類のモデル(ポテンシャル・ゲーム)を定式化した.応募者による先行研究成果との比較可能性のため,1次元離散円周空間における理論解析を通じて,確率安定均衡状態の特性を調べた.特に,交通費用の変化が集積パターンに与える基本的影響を解析的・数値的に明らかにした. Step 2 として,分岐理論(局所安定性解析手法)による結果との比較を実行した.具体的には,均衡状態における利得関数の Jacobi 行列の固有値に基づく標準的な局所安定性解析手法に基づき,ベンチマーク・モデルの特性を解析的・数値的に分析した.そして,上述で明らかにした確率安定均衡解の性質と,局所安定解の性質とを比較することによって,その整合性を確認し,確率安定性解析の妥当性を示した. 以上の結果の一部は,複数の国際学会で発表済みである.また,国内・国際学術誌に投稿中である.
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