研究実績の概要 |
本研究は,ランダムでない欠損や外れ値などを含む“dirty”(不完全)な空間データに対する統計分析手法を開発するものである.具体的には,非ランダムなデータ欠損への対処法であるサンプルセレクションモデル,外れ値に頑健な無条件分位点回帰モデルといった計量経済学分野で発展したdirty(不完全)データへの対処手法を空間データの統計分析に応用し,パラメータの推定手法を提案する.これにより,データ・手法上の制約から土木計画において従来困難であった実証分析への道を拓き,いくつかの新しい事例分析を行う. 平成29年度は,モデル開発を行った,具体的には, (1.1)非ランダムな欠損データのための空間計量経済モデルの開発 (1.2)外れ値に頑健な空間計量経済モデルの開発 を実施した.このうち,(1.2)は完成し,論文を投稿中である.(1.2)には,Firpo(2009) [Unconditional Quantile Regressions, Econometrica] によって提案された無条件分位点回帰モデルを,空間計量経済学分野の空間自己回帰モデルに応用し,実地調査で取得した広島市の駐車場価格データに適用した.また,ベイズ統計学に基づくモデルのパラメータ推定方法を提案した.(1.1)も,Heckmanのサンプルセレクションモデルを応用する形で,モデルの開発は概ね完成した.こちらは,ガソリンスタンドの価格競争や撤退の分析に応用する予定である.
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