研究課題/領域番号 |
17K14740
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
坪田 隆宏 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 助教 (00780066)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 連続運転時間 / 運転馴化 / プローブデータ / 交通安全 / 事故リスク / サグ |
研究実績の概要 |
平成29年度は,運転馴化の指標として連続運転時間を用いたうえで,(1)同指標と車両挙動の変化の関係をモデル化するとともに,(2)運転安全性との関係を統計分析により明らかにした. (1)については,四国の高速道路,松山自動車道を対象に,プローブカーから得られる1秒毎の車両位置情報(ドットデータ)から各ドライバーのトリップを抽出し,100m区間ごとの連続運転時間を算出した.続いて,運転挙動の定量化指標を選定した.本研究では,運転馴化と運転挙動との関係に着目しており,馴化時には特定の刺激に対する反応遅れが生じることが考えられる.そこで,サグ底通過時の運転挙動を定量化することとした.すなわち,運転馴化時にはサグの存在,またはサグ底通過後の速度低下という刺激に対する,アクセルの踏みこみや再加速といった反応が遅れるとの仮説を措定し,同仮説を検証した.連続運転時間とサグでの減速走行距離,および速度低下量との関係をPiecewise Linear Regressionによりモデル化した結果,連続運転時間が5000秒のときに,両指標が有意に増加する傾向が確認でき,連続運転時間の増加による運転挙動変化を実証し,運転馴化による反応遅れを示唆する結果を得た. (2)については,長時間連続運転状態の車両,すなわち運転馴化に陥った車両によって道路区間の交通安全性が低下するとの仮説を措定し,その検証を行った.具体的には,(1)に使用したデータを用いて,100m区間ごとの連続運転車両混入率を算出した.ここで,連続運転車両とは起点,またはSA/PAから出発して5000秒以上の連続運転を継続している車両を指す.次に,同混入率を説明変数に用いた事故リスク推定モデルを構築した.推定の結果,連続運転車両混入率の係数が正に有意に推定されることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では平成29年度においてドライビングシミュレータ(DS)を作成し,DS空間内における走行実験により長時間運転時の車両挙動変化特性を把握することを予定していた.しかし,本目的はプローブカーデータによるドットデータから実証することが出来たため,DS実験は実施しなかった. 運転馴化検出モデルの構築については実施していない.その理由は,馴化に関するレビューを重ね,検討した結果,馴化とは反復作業の継続に伴って段階的に発現するものであり,馴化の有無を2値的に区分することは困難であるとともに,工学的に大きな意義を持たないと判断したためである.代わりに,本研究では,馴化は連続運転時間の増加に伴い進展し,ある閾値以上で周辺の交通流に評価可能な形で影響を与えるものと考え,連続運転時間と交通安全性,すなわち事故リスクとの関係を統計的に明らかにすることとした. 再設定した目的は概ね達成しているため,本研究は「概ね順調に進展している」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
当初計画では,個人差を考慮した馴化検出モデルの構築を目指していた.しかしながら,「進捗状況」で述べた理由により馴化検出モデルの構築を断念し,馴化が交通流に与える影響評価に変更している. 平成30年度は,連続運転時間と運転挙動変化の関係について,道路幾何構造や天候,時間帯等を考慮したモデル化を実施する予定である.
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