研究課題/領域番号 |
17K14746
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研究機関 | 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所 |
研究代表者 |
虎谷 大地 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, 電子航法研究所, 研究員 (10780976)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 航空交通管理 / 最適制御 / 混合システム最適化 / 航空管制 / 軌道最適化 / 干渉回避 / 混合整数計画法 / 合流最適化 |
研究実績の概要 |
本研究では,将来の航空交通管理のための到着・出発合流最適化アルゴリズムの開発を行っている.合流最適化とは,連続システムである航空機の軌道と,離散システムである航空機の到着・出発順序を同時に最適化する,混合システム最適化アルゴリズムである.開発するアルゴリズムの目的は,空港周辺空域の到着・出発航空機の軌道や,到着・出発順序を,同時に最適化することで,空港周辺空域の航空機運用を最適化することである.到着・出発機を同時に最適化するためには,上空での到着・出発機の軌道の干渉回避を考慮する必要がある.軌道の干渉回避はそれ自体,混合システムの一種であるため,具体的には,合流最適化アルゴリズムを,より多くの離散システムを扱うことができる混合システム最適化アルゴリズムに改良する必要がある. 平成29年度は主に干渉回避を考慮することで,到着・出発機の合流がどのような影響を受けるかの調査と,干渉回避を考慮した合流最適化問題の解法の検討を行った.2機の航空機の干渉回避軌道最適化問題は先行研究で広く研究されてきたので,この問題を解くプログラムを作成し,様々な条件でシミュレーションを行うことで,干渉回避が到着・出発順序最適化に与える影響を調べた.シミュレーションにより,干渉回避と到着・出発順序最適化が互いに影響を及ぼし合うことを確認した.すなわち,両者を同時に最適化することができれば,より最適な解を得ることができる余地があることを示した.作成した干渉回避軌道最適化プログラムは従来の手法を用いており,そのまま到着・出発順序最適化に応用することはできないが,この問題を解決するため,繰り返し最適化手法を用いた干渉回避と到着・出発順序の同時最適化アルゴリズムを提案した.提案した最適化アルゴリズムは平成30年度にプログラムを作成し,その最適性を検証する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度には,干渉回避を考慮することで到着・出発機の合流がどのような影響を受けるかの調査と,干渉回避を考慮した到着・出発合流最適化問題の解法の検討を行った.事前の研究計画では平成29年度に,干渉回避を考慮しない到着・出発合流最適化アルゴリズムの開発を行い,平成30年度に干渉回避軌道最適化が合流最適化問題に与える影響の調査,及び干渉回避を考慮した到着・出発合流最適化アルゴリズムの開発を行う予定であった.しかしながら研究に着手した後,干渉回避が到着・出発合流最適化問題にどのような影響を与えるかを調査しなければ,干渉回避を考慮することができる到着・出発合流最適化アルゴリズムの開発が困難であることが明らかになり,先に平成30年度に予定していた干渉回避軌道最適化が合流最適化アルゴリズムに与える影響の調査を行った.結果的に平成29年度中に,次年度に予定していた研究の一部である,干渉回避が到着・出発合流最適化問題に与える影響の調査と,当初から平成29年度に予定していた到着・出発合流最適化アルゴリズムの検討を行うことができた.以上の点より,研究進捗は「当初の計画以上に進展している」であると言うことができる.ただし前述したように,一部研究計画の見直しにより研究の順序が前後した影響で,平成29年度は学会発表等の研究成果の発表をすることができなかった.そのため,全体の研究進捗としては「おおむね順調に進展している」とした.
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況で述べたように,研究そのものの進捗は順調であるため,引き続き当初の計画通り,干渉回避を考慮した,到着・出発合流最適化アルゴリズムの開発を進めていく.ただし,平成29年度には研究成果の発表を行うことができなかったため,次年度以降は成果の発表にやや重きをおき,学会発表等を行っていく. また研究実績の概要で述べた通り,本研究の目的は空港周辺空域の航空機運用を最適化することであり,そのために干渉回避を考慮した,到着・出発合流最適化アルゴリズムの開発を行っている.一方,到着・出発合流最適化問題に関しては干渉回避以外にも,空港容量最大化という研究課題がある.これは到着・出発機の軌道や順序を最適化する際に,従来,主に使われてきた航空機の燃料消費量を最小化する以外に,できるだけ空港に到着・空港から出発する航空機数を多くするという最適化問題である.空港容量最大化アルゴリズムは,近年の空港周辺空域の混雑を解消するために,現実の航空管制対して非常に重要な技術のひとつである.そこで平成30年度以降は,空港容量を最大化する合流最適化アルゴリズムの開発も平行して行う.干渉回避に加えて空港容量の最大化も行うことで,開発する最適化アルゴリズムは,現実的問題に対してより効果的な最適化を行うことができるようになると期待される.
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次年度使用額が生じた理由 |
一部研究計画の変更により,平成29年度購入予定のソフトウェアを見送ったため,また研究計画の変更に伴い,研究成果の発表計画にも変更が生じたため,次年度使用額が生じた.研究計画の変更は限定的で,平成29年度中に当初の計画と整合するように研究の方針が修正されたため,次年度使用額は平成30年度以降に当初の計画通りに使用する計画となっている.
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