本研究では,空港に離発着する航空機の軌道,及び到着・出発順序等を同時に最適化するアルゴリズムの開発を行った.空港に離発着する各航空機は,安全確保のため滑走路上で適切な間隔を保たなければならない.空港周辺における航空機の運航を最適化するためには,各航空機の軌道と,滑走路上における到着・出発機の順序を同時に最適化する必要がある.この問題において軌道は連続システムである一方,順序は離散システムであるため,航空機の軌道と順序を同時に最適化する問題は混合システム最適化問題の一種であるといえる.混合システム最適化問題は汎用的な解法が確立されておらず,新たな最適化手法を開発する必要がある.本研究課題は,空港周辺における航空機の軌道と順序の最適化,すなわち航空機の合流の最適化という現実的な課題の解決と,ある混合システム最適化問題を解く方法を開発するという学術的な貢献の,2つの面を併せ持った研究課題である. 前年度までは,到着・出発機両方の合流を最適化するアルゴリズムを開発した.加えてより現実的な問題に対応できるよう,到着機が平行滑走路のどちらに到着すべきかも同時に最適化するアルゴリズム,各航空機の燃料消費量や飛行時間のみならず,滑走路処理容量を最大化するアルゴリズムを開発した.これらの合流最適化アルゴリズムは,全て簡単な2次元移動体モデルを用いて検証が行われてきた.そこで令和元年度は,これまでに開発した最適化アルゴリズムを現実的なシミュレーション環境を用いて検証した.具体的には,現実的な旅客機の運動モデルを用い,羽田空港周辺の空域を模擬したシミュレーション条件で検証を行った.シミュレーション結果より,現実的な環境においても開発した最適化アルゴリズムが有効であるということが確認された. また本年度は本研究課題の最終年度であるため,成果のまとめとして投稿論文を執筆し,2本掲載された.
|