本研究では、膜分離活性汚泥法における膜目詰まり機構の解明および制御・予測技術の発展に資する知見を得るために、これまであまり着目されてこなかった活性汚泥フロック外微粒子に着目し、その数や組成、変動を明らかにするとともに、膜目詰まりとの関連について検討した。 本年度は、実験室にて膜分離活性汚泥リアクターを連続運転し、昨年度までに検討した蛍光染色条件およびフローサイトメーターでの分析条件を用いて、汚泥中微粒子の変動と膜目詰まりとの関連について検討を進めた。 まず、活性汚泥試料の分析にあたっての分析操作・条件(遠心分離、ろ過、希釈倍率、シグナルthreshold)を検討した。同一試料に対して複数回の分析を行い、良好な再現性が得られることが確認できた。続いて、実験室で2基の膜分離活性汚泥リアクターを立ち上げ、汚泥滞留時間を変えて運転を行った。汚泥のろ過性指標として用いられるろ紙ろ過量とcapillary suction timeのデータを取得するとともに、上述の条件でフローサイトメーターを用いた微粒子プロファイルのデータも取得した。得られたフローサイトグラムから、微粒子の数や組成が時間とともにダイナミックに変化していることが明らかとなった。Partial least square regression(PLSR)を用いて、微粒子プロファイルデータを説明変数、ろ過性指標の値を応答変数とした回帰モデルを構築した。その結果、良好な予測性能指標(Q2 >0.5)のモデルを構築することができ、微粒子プロファイルに基づき汚泥のろ過性を予測可能であることが示された。また、VIP値に基づき、ろ過性指標と関連が高いと考えられる微粒子画分を選別することができた。これらの画分は、膜ファウリング制御のための指標として活用可能であると考えられる。
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