1.はじめに:平成30年度に回分式により活性汚泥のシリカによる馴養試験を行った。その結果、ケイ酸を添加した条件でBacillus属細菌がやや増加することが示唆された.また,回分試験の結果からケイ酸を添加することでNH4-N濃度低下速度が変化すると推察されるなど、無機溶存物質による微生物の活動に影響が示唆された.しかし、硫酸塩還元細菌に及ぼす影響は明確にならなかった。本年度,ケイ酸(シリカ)を添加した活性汚泥の生物叢の変化について解析し,さらに硫酸塩還元細菌におよぼす影響について調査した結果を報告する. 2.実験方法:群馬県内のR都市下水処理場活性汚泥(以下、R汚泥)を用いた.この活性汚泥を用いて,ペプトンを有機源とした基質に,Siを添加した条件と活性汚泥と基質のみのブランクの条件で20℃の恒温槽内にて馴養した.寒天培地を用いてBacillus属細菌のコロニー培養・計測した.また、R系汚泥,および馴養汚泥のDNAを抽出し,NGSによる微生物群集解析を実施した.さらに,4か所の処理場(都市下水処理場,し尿処理場)の活性汚泥を用いて,ペプトンを主とした基質で嫌気回分試験を実施した. 3.実験結果と考察:馴養開始から約2週間後のBacillus属細菌(Bacillus subtilis)のコロニー培養結果,Bacillus subtilisコロニー数に差が確認され,NGSの解析結果からも約2週間後にBacillus subtilisの割合が高くなったことが明らかになった.従って,ケイ酸を添加することによってBacillus属細菌が増殖したと推察された.また、回分試験の結果から、ケイ酸添加によって硫酸イオン濃度の減少がやや抑えられる傾向が示唆された.しかし,Si添加により,どのようなメカニズムで硫酸塩還元活性に影響を与えられているのか明確にすることはできなかった.
|