研究課題/領域番号 |
17K14755
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松川 和人 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (50709186)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 鉄筋コンクリート / 柱 / 残存軸耐力 / せん断破壊 |
研究実績の概要 |
平成29年度は,既往研究において研究代表者らが提案した残存軸耐力評価法の適用範囲を明らかにし,実用化への端緒を築くことを目的として,1)鉄筋コンクリート造柱試験体の加力実験,および2)国内外の同種の柱試験体の実験データ収集を通したデータベース分析を実施した。1)においては,2体の試験体を加力し,その軸力保持能力を把握した。2)においては,41体の試験体データを収集した。 これらの結果,研究代表者らが提案したモデルの適用範囲は,せん断補強筋比0.2 - 0.5%,主筋比2.0%以上の,一般的な既存鉄筋コンクリート造柱をカバーできる範囲であることが明らかとなった。この範囲においては,米国等で広く用いられている代表的な評価モデルであるShear Frictionモデルよりも高い精度を示し,実用に耐える精度を有していることが明らかとなった。また,当初はコンクリート強度が適用範囲を限定する主たる要因になると考えていたが,限られた試験体数からなる本検討結果から判断すると,その影響は限定的なものであった。なお,実験結果より,鉄筋の端部詳細の影響も同じく限定的であった。 加えて,せん断破壊時の力の釣合い条件を満たさない試験体,すなわち主筋や補強筋がそれぞれ軸力やせん断力に対して十分でない試験体については,上記の残存軸耐力評価法の軸崩壊点の定義である「せん断破壊後にせん断力が0まで低下したとき」に合致しない破壊性状を示すことがあることがわかり,この影響については今後も検討を続ける予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた実験を完了し,研究目的である「残存軸耐力評価法の実用化」に必要な適用範囲をおおよそ明らかにできたため。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は,曲げせん断破壊型の試験体に対しても同評価法が適用できるかどうかを検討するため,加力実験およびデータベース分析を進める予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初は曲げせん断破壊型の試験体の加力実験を,せん断破壊型の試験体の加力実験と並行して実施する予定であったが,せん断破壊型の結果を詳細に分析してから曲げせん断破壊型の試験体を加力する方が,研究成果を最大化する観点で良策であると判断したため。
|