本研究は,鉄筋コンクリート造柱の軸力保持能力評価モデルであるアーチ抵抗モデルの適用性を検証するため,せん断補強筋フックの角度や定着長などの配筋詳細が残存軸耐力に与える影響を明らかにすること,曲げ降伏後せん断破壊する柱への適用性を明らかにすること,の2点を目的として実施した。 1)配筋詳細の影響を調査する実験を実施した結果,せん断補強筋の破断やフックが外れることにより,せん断破壊直後に崩壊する試験体が複数確認された。これらの試験体では提案モデルの重要な仮定条件である「軸崩壊時のせん断力がゼロである」を満たさない崩壊性状の試験体である。従って,既往研究等から実験データを収集し,せん断破壊時の鉛直・水平両方向のつり合いを検討することにより,こうした「せん断破壊直後には軸崩壊に至らず,せん断力がゼロとなるまで軸崩壊しない」条件を整理し,これを同モデルのひとつの適用範囲とした。また,作用軸力P/主筋Asfyの軸耐力の比が1.0を超える試験体では精度の低い結果が得られていたが,これはモデルの仮定条件(主筋のN-M相関関係を直線近似)に起因することを明らかにした。最終的に,同モデルの適用範囲をP/Asfy < 1.0,0.2<pw<0.45%と定めた。 2)曲げ型の試験体については,既往の実験研究のデータを参照し,最終的に材端部(部材両端部)にせん断破壊が生じる場合は実際の水平変形を1/2にし,最終的に部材全長にわたってせん断破壊が生じる場合は全水平変形をアーチ抵抗モデルに入力することで,良好な精度が得られることを明らかにした。加えて,小変形領域で破壊する柱への適用性を検討するため,2体の曲げ柱に高軸力を作用させ,加力実験を実施した。これらの試験体に同モデルを適用したところ,いずれも実験結果を過大評価することとなった。
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