最終年度は,建物の非弾性応答を需要の高さを鑑みて,前年度で完了していた内容を発展させることに注力した。具体的には, 1) 弾塑性建物において,一自由度系でのみ検証していたTMDの制振性能の検証を精査(多自由度系への発展,観測地震動に対する検証) 2) 弾塑性応答する建物にTMDを用いる場合のAI(深層学習)による最適設計支援の可能性を検討 3) 摩擦型TMDによる制振性能を振動台実験で検証するための準備 である。1)の成果については,世界地震工学会議 (WCEE)の特別セッションに採択された。セッションは,日本における大振幅地震動に対する振動制御の取り組みをテーマとしている。また, 日本鋼構造協会のシンポジウムで発表した内容がSelected Paperに選ばれた。いずれも,本研究成果が社会的に重要であると認められた結果である。2)については,複雑になりがちなTMDの設計を,より直感的に設計できる可能性を探った。振動解析を用いて学習用のデータを多数作成し,それをニューラルネットワークにより学習した。さらに,学習したネットワークを用い,建物やTMDの設計パラメータによる応答の変化をより視覚的かつ対話的に確認できるWebアプリケーションを実装した。これを以下で述べる国際共同研究での研究開発に利用し,その有用性を確認した。3)については,台湾の国立研究所である国家地震工程研究中心 (NCREE)および構造設計事務所 Kuochen and Associates Ltd.との共同研究を締結し,台北に多く存在する既存共同住宅の耐震改修を低コストで実現するための摩擦型TMDの振動台実験を準備した。共同研究を通じて,これまで得た知見を実際の構造設計に活かし,構築したTMDの応答指定型設計法の枠組みを水平展開した。
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