研究課題/領域番号 |
17K14760
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
鈴木 賢人 東京理科大学, 理工学部建築学科, 助教 (80757055)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 木質構造 / 面材耐力壁 / 速度依存性 / 劣化挙動 |
研究実績の概要 |
木質面材耐力壁を対象に、①繰り返し載荷スケジュールを変化させた静的載荷実験と②標準載荷試験、③動的載荷実験、を実施し、面材壁を構成する接合部を対象に、④静的載荷実験と⑤動的載荷実験を実施した。 本実験においても、先行研究と同様に、繰り返し劣化挙動と速度依存性による影響が確認された。 繰り返し劣化挙動については、処女載荷(1回目の載荷)から2回目の載荷での耐力低下が顕著であり、3回目以降の影響はそれに比べ小さいことが確認された。速度依存性については、同一変形時の耐力を比べると動的載荷結果が静的載荷結果を上回った。ただし、最大耐力は荷重速度によらず一定であったため、荷重上昇がはやい分、動的載荷では静的載荷に比べ小変形で損傷し、全体的に変形性能が低下した。 これらの結果は、耐力壁を構成する接合部の挙動から説明可能であることが確認され、その知見から、接合部実験結果のみを用いて、耐力壁の繰り返し劣化を概ね再現できる解析モデルを作成した。一方で、接合部の速度依存性に関わる主な特性値(粘性係数)が、各部の損傷とともに複雑に推移することが確認されたため、荷重速度の違いによる影響を考慮した一般性のある解析モデルの作成には至らなかった。しかし、特解的ではあるものの、特定損傷時の粘性係数を既知とすれば、耐力壁が最大耐力を発揮する以前の変形域では、理論的に速度依存性を再現できることができた。 さらに、上記した、耐力壁の繰り返し劣化を概ね再現できる解析モデルを用いて、建物モデルを構築し、耐力壁の劣化が建物の耐震性能に及ぼす影響について、その大要を把握した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
面材耐力壁の載荷実験を計画通り実施した。各部の損傷に伴う、速度依存に関わる特性値の推移が複雑であったため、一般性のある解析モデルの作成が出来なかった点については、当初の計画から遅れがでた。しかし、次年度予定していた理論開発に向けた足がかりとなる特解的な理論の妥当性が確認できたことと、繰り返し劣化挙動については、当初の計画よりやや早いペースで計画が進んだことから、総合的に判断して、「おおむね順調に進展している。」と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の結果では、耐力壁の速度依存性の影響は確認できたものの、一般性のある理論構築に向けて、十分なデータが揃わなかったため、耐力壁と接合部、両方に対する追加実験と材料実験を行い、基礎データの収集を行う。また、その結果を用いて速度依存性を再現できる解析モデルの作成を行う。それ以外の内容については、当初の計画に従い進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度実施した実験のうち、繰り返し挙動を調べるための試験体数を削減したため、次年度使用額が生じた。なお、本年度は、速度依存性の影響を調べる実験を先に実施し、その後、繰り返し劣化を調べる実験を実施した。その過程で、速度依存性の影響を把握するには当初予定していた実験だけでは不十分であり、追加実験を実施する必要性が発覚した。そこで、次年度に追加の実験を実施できるよう、繰り返し挙動を調べるための試験体数を削減した。
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