研究課題/領域番号 |
17K14765
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
脇田 健裕 早稲田大学, 理工学術院, その他(招聘研究員) (10469025)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 薄板軽量形鋼造 / CFS建築 / 摩擦 / 振動台実験 / 高減衰 / 制振 / ドリルねじ |
研究実績の概要 |
本研究では壁及び床構造に薄板軽量形鋼とCLTを適用した、ハイブリッド型高減衰構造システムを開発することを目的としている。提案する構造システムは、耐力壁の復元力特性に摩擦力を利用した機構を適用することで、高い靭性と耐力及びエネルギー吸収能力を発揮し、過酷な地震動の入力に対しても変形と加速度の応答を同時に抑制すると共に、余震等の繰り返しの地震入力に対しても建物機能を維持し続ける。本研究で提案する構造システムは、異なる部材が相互の構造的弱点を補うことで、高い性能を発揮するものであり、本研究成果により、極めて高い耐震性と機能性を有する建築物が省資源かつローコストで実現可能となる。 本年度はまず、本研究で提案する摩擦内蔵耐力壁を中層建築物に適用する際に要求される耐火性能を確保するために、耐力面材をこれまでに使用していた構造用合板から、無機系面材である火山性ガラス質複層板とした場合の仕様について実大耐力壁加力試験によりその検討を行った。火山性ガラス質複層板は耐火性・耐久性に優れる一方で素材自体の靭性は乏しい。そこで摩擦機構の鋼板部を面材の割れ防止に有効に働くような形状として設置することで、耐力壁としての靭性とエネルギー吸収能力が比較的に向上することが明らかとなった。 次に中層建築物への適用を行った場合の耐震性を検討するため、縮小3層フレームを用いた振動台実験を実施した。本実験により提案する構造システムが、繰り返しの地震動入力に対し極めて安定したバイリニア型の荷重変形関係を示すとともに、上階での加速度応答の増大を効果的に抑制する性能を有することを実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は提案する構造システムの主要な耐震要素である摩擦耐力壁の実用化仕様の検討を行うための実験に加えて、中層建築物への適用を考慮した3層フレームの振動台実験を実施することが出来た。本振動台実験の実施は申請者が分担研究者として参加している別の研究プロジェクトで実施した振動台実験の基本架構体として採用されたことによるものである。本振動台実験の実施により有益な成果が数多く得られた一方で、実用化に供するための設計及び生産システム構築に関する検討がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度及び本年度に実施した各種実験の成果を基に、提案する構造システムの実用性を考慮した生産システム及び設計法に関する検討を中心とした研究を進める。また研究成果の実用化に向けて、論文執筆の他シンポジウムの実施等による研究成果の公開に関する活動をおこなう予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請者が分担研究者と参加する別の研究プロジェクトが今年度に大型予算を獲得して研究を実施することとなった。本研究とは研究目的等が大きく異なる研究ではあるが、実験の一部を共有して実施できたため予算を下回る経費で、計画を上回る成果を得ることが出来た。しかしながら実用化に供するための設計法及び生産システム構築に関する検討に若干の遅れが生じているため研究期間を延長して研究を継続することとした。よって今年度の未使用額を次年度の使用額として計上する。
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