本研究では壁及び床構造に薄板軽量形鋼とCLTを適用した、ハイブリッド型高減衰構造システムを開発することを目的としている。提案する構造システムは、耐力壁の復元力特性に摩擦力を利用した機構を適用することで、高い靭性と耐力及びエネルギー吸収能力を発揮し、過酷な地震動の入力に対しても変形と加速度の応答を同時に抑制すると共に、余震等の繰り返しの地震入力に対しても建物機能を維持し続ける。 本研究で提案する構造システムは、異なる部材が相互の構造的弱点を補うことで、高い性能を発揮するものであり、本研究成果により、極めて高い耐震性と機能性を有する建築物が省資源かつローコストで実現可能となる。本年度はまず、本研究で提案する摩擦内蔵耐力壁を中層建築物に適用する際に要求される耐火性能を確保するために、耐力面材をこれまでに使用していた構造用合板から、無機系面材である火山性ガラス質複層板とした場合の仕様について実大耐力壁加力試験によりその検討を行った。火山性ガラス質複層板は耐火性・耐久性に優れる一方で素材自体の靭性は乏しい。そこで摩擦機構の鋼板部を面材の割れ防止に有効に働くような形状として設置することで、耐力壁としての靭性とエネルギー吸収能力が比較的に向上することが明らかとなった。 次に中層建築物への適用を行った場合の耐震性を検討するため、縮小3層フレームを用いた振動台実験を実施した。本実験により提案する構造システムが、繰り返しの地震動入力に対し極めて安定したバイリニア型の荷重変形関係を示すとともに、上階での加速度応答の増大を効果的に抑制する性能を有することを実証した。
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