研究課題/領域番号 |
17K14771
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
奥園 健 神戸大学, 工学研究科, 助教 (40727707)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 室内音響設計 / 非拡散音場 / 吸音 / 波動数値解析 / 有限要素法 / 次世代吸音体 |
研究実績の概要 |
本研究では、吸音面が偏在する非拡散音場の音響調整に効果的な吸音処理手法の開発を目指している。初年度は、その礎となる非拡散音場における吸音体の吸音機構の解明について基礎的な検討を行うとともに、高性能な吸音体の開発に着手した。得られた研究成果は下記の通りである。 1.非拡散音場における吸音体の吸音機構の解明:典型的な非拡散音場のベンチマーク問題として、天井のみ高吸音で他は反射性の矩形室を設定し、時間領域有限要素法による波動数値解析を用いた検討を行った。非拡散音場における吸音性能への影響因子として、吸音体の斜入射吸音特性・室寸法・周波数に着目した。結果として、斜入射吸音特性は室内インパルス応答の減衰性状に大きな影響を与え、吸音体の統計吸音率が同一であっても、擦過角入射吸音率が高い方が、より大きな減衰が得られることを示した。ただし、周波数が高くなるほど、その効果は小さくなる。 2.高性能な吸音体の開発:これまでに数値解析を用いて基礎的な吸音メカニズムを明確にしてきた通気性膜吸音体アレイを試作し、背後空気層デザインの異なる従来の単一通気性膜吸音体2種と残響室法吸音率を比較した。通気性膜には、流れ抵抗と面密度の異なる9種の化学繊維素材の織物・不織布を用い、アレイ構造には、ハニカムコアと遮音シートを使用した。結果として、検討した物性値の範囲において、通気性膜吸音体アレイは、従来の単一通気性膜吸音体2種に比べ、より広帯域に高い吸音率を示すことを実証し、背後空気層デザインの違いが吸音性能に大きく影響することを確認した。ただし、当初予期していなかったアレイ構造自体が高い吸音性をもつことも明らかとなった。また、通気性膜吸音体アレイならびに2種の従来吸音体のいずれにおいても、流れ抵抗が高く面密度が大きな膜を使用したほうが高い吸音性能を得られることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
29年度は、非拡散音場における吸音体の吸音機構の解明に向け、非拡散音場のベンチマーク問題を通して、吸音体の斜入射吸音特性が果たす役割をある程度把握できたと考えている。また、これまでに理論的・数値的に検討してきた通気性膜吸音体アレイの有効性を残響室法吸音率の測定を通して従来吸音体との比較から実証することができた。よって、当該研究課題の進捗状況を(2)と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は29年度の成果をもとに、主に室寸法に着目し、非拡散音場における吸音体の吸音機構について検討を行うとともに、意匠面や吸音処理に有するスペースなど実際の運用上の制約を考慮の上で効果的な吸音体配置を検討する。さらに、実際の室内を想定し、什器による拡散・吸音効果を考慮する予定である。また、通気性膜吸音体アレイの非拡散音場における吸音性能を数値的に検討する予定であるが、その数値モデル化について、29年度に行った残響室法吸音率の測定から、これまで用いていた理論では考慮していなかったアレイ構造自体がもつ吸音を考慮する必要性があることがわかった。そこで、まずはアレイ構造の吸音モデルを構築し、その後、非拡散音場における吸音性能を調査する予定である。
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