研究課題/領域番号 |
17K14776
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
鈴木 達也 宇都宮大学, 地域デザイン科学部, 特任助教 (30786281)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | コンパクトシティ / 最適配置 / 市町村合併 / 人口集塊 / 都市境界 |
研究実績の概要 |
本研究は市町村ごとに取り組む立地適正化計画による多極型コンパクトシティに関連し、住民の施設利用時のアクセシビリティを基にした施設配置モデルを援用し、人口分布のまとまりと行政界の不一致による負の影響を明らかにするとともに、住民の移動距離に着目した最適な都市境界を理論的に導出することで、隣接自治体との広域的なコンパクト化計画の効果と必要性について定量的な指標を得ることを目的とする。1年目に当たる本年度は以下の実績が挙げられる。 本研究の根幹となる拠点配置の基礎モデルの構築については、約500m四方の格子上に集計された人口分布を基にしたアクセシビリティによる計算アルゴリズムを構築中である。これに関しては、データ量が膨大であり、本年度試行版のアルゴリズムを構築し計算時間の確認を行ったが、全国規模の計算には耐えず、引き続き計算時間の短縮方策について着手した。また、全国規模でのデータ収集とデータ処理を並行して進めた。 また、本研究における配置モデルの妥当性を確認するため、特定の施設による配置問題との突合を試みた。具体的には、多極型コンパクトシティの拠点配置に関連し、公共施設の一つである消防署の配置を救急需要の多寡と移動距離を用いて最適化を行った。その結果、需要が多い地域において供給不足が発生し、隣接の施設がこれを補うことにより、周辺一帯でサービスレベルが低下することが確認された。このことは、需要密度を高めることで効率化を目指すコンパクトシティにおいて、成立する人口密度上限が存在することが示唆され、居住誘導や都市機能誘導を人口密度とサービス供給量を考慮しながら進める必要性が確認された。 以上から、研究開始時に想定していた本年度の計画である「拠点配置における基礎モデルの構築」については、妥当性の検証を含めて確認することができ、平成30年度に向けた基盤が整った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に取り組んだ公共施設研究により、コンパクトシティにおける拠点配置問題との整合性の確認ができた。その結果、多極型コンパクトシティ計画における理論的な根拠を示す上で、重要と考えられる都市規模の指標を組み込む必要性が示唆され、非常に重要な進展であった。研究全体の進捗としては、基礎モデルの構築と計算アルゴリズムについてはおおむね順調に進んでおり、引き続き全国のデータ整備と併せて取り組む予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度には、当該年度に残された課題を整理しつつ、持続可能な都市域の最適化に着手する。これについて、まずケーススタディとして栃木県を対象とし県内の25市町の行政界を最適化した時の利便性分布の可視化を行い、現状の行政界との比較を通し、双方の利便性の差を定量的に把握する。これにより、広域でのコンパクトシティ計画の効果を定量化すると同時に、誘導地域、非誘導地域の都市域が行政界を跨ぐことによる現状の人口分布と都市境界の不一致がどのような地域で生じるのかを可視化、把握し、その傾向について市町村合併の経緯とともに考察する。その後、全国での合併の影響と人口分布傾向を確認するとともに、手法の一般化を行うことで広域的なコンパクト化が有効な条件、言い換えると、市町村単位でのコンパクト化が困難な地域の条件を明らかにする。また、これと同時にいくつかの公共施設配置を例に、最適化された都市境界における住民の施設利用時の利便性の差異を定量的に示すことで、多様な切り口から都市境界の最適化の効果の検証を行い、単独市町村で行うコンパクト化による限界と広域計画の効果を探る。 以上で得られた知見について、論文として投稿、学会での発表を行い成果の公開に努めるとともに、最新の研究動向、現在進められている立地適正化計画の進捗などの調査を行う。また、計画3年目の準備段階として、行政界の最適化における境界の数を現在の市町村数ではなく、内生的にいくつの都市域が必要であるか決定する最適化モデルへ発展させるための指標抽出、及びモデル構築を進める。
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