本研究の目的は、全国の市町村で進められているコンパクト・プラス・ネットワークにおける拠点の配置に関して定量的な指標を示すことである。具体的には、人口の集塊性と移動利便性を基に施設配置モデルによる評価方法を開発することである。 本研究課題では、人口分布の局所的な集塊による影響を考慮した多極型拠点配置モデルの開発を行った。このモデルでは、従来の最寄り施設にのみ需要が発生することを仮定したモデルに拠点間の移動距離を組み込むことで、拠点を設置し過ぎることによる都市の分散化と拠点までの移動の利便性を同時に最適化することができる。これにより、それぞれの拠点での公共サービスの補完や、具体的な公共施設群の設定を都市全体として評価することが可能となった。また、上記と並行して都市をコンパクト化した際の公共サービスの成立性と持続性の評価を行った。公共サービスの一つである救急搬送の需給状況を基に、消防署の立地評価を行ったところ、供給量が限定されている状況では、需要が多い地域で供給不足が生じ、隣接の施設がこれを補うことにより、周辺のサービスが低下することが確認された。このことから、コンパクト・プラス・ネットワークを目指す都市構造において、拠点ごとの人口規模及び公共サービスの供給量を考慮する必要が強く示唆された。 最終年度では、上記研究成果の公開に努め、昨年度の成果である論文発表について、翻訳論文として英語化しオンラインジャーナルに投稿し2020年4月に公開に至った。また、本研究課題により新たに得られた拠点規模とサービス供給量を組み込んだ拠点配置モデルについては、地方自治体で進められている立地適正化計画、公共施設の再編計画、さらには地域包括ケアシステムといった公共サービス提供と居住地分布に関する横断的な計画立案に資する知見を与えることが期待され、社会的、学術的に重要である新たな研究シーズが得られた。
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