最終年度は、一定数のニーズが期待される「地域の福祉拠点を活用した地域住民による託児サービス(以下、地域福祉拠点活用の託児サービス)」について、利用者側への提案検証にかかる調査を実施した。首都圏郊外部に立地する民間の一時預かりサービス3箇所の利用者を対象とした調査であり、利用者が最も多い年度末2022年2月から4月にかけて、留置式のアンケート調査(301部配布、100部回収)を実施した。さらに、アンケート回答者の中からインタビュー調査協力者を募り、2022年3月から6月までの間に、計21人に対してオンラインビデオ通話による調査を実施することができた。 アンケートでは、①一時預かりサービスの利用実態と今後の利用意向、②地域福祉拠点活用の託児サービスの利用意向、③家族構成や祖父母からのサボート頻度、④住環境の4点を尋ねている。COVID-19拡大禍で一般化したことが想定される、在宅ワーク時での預かり等、預かりの「場面」や「場所」に関するニーズの変化にも注意を払いつつ調査を実施した。またインタビューでは、日常の子育て環境の地理的特性についても、住宅地図を用いながら捉えた。 以上6年間にわたる研究を通して明らかにしつつあるのは、1)一時的な預かりサービスは母親の体調不良時やリフレッシュなど就業に拠らない場面においても求められていること、2)預かりの場所として自宅や担い手宅は密室化への不安があり、これが利用を躊躇する一要因にもなっていようこと、3)一方で施設におけるサービス拡大への期待の背景には、複数の目が及ぶ安心感があろうこと、4)この場合、保育士ではなく、研修を受けた地域住民による預かりでも構わないと考える層が一定数いることである。 以上より、子育て世帯向けの住環境整備において、地域福祉拠点活用の託児サービスの拡大が期待され、今後はその具体化に向けた課題を明らかにしたいと考えている。
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