本研究は,人口減少社会において都市の縮退や集約の必要性があるなかで,災害危険度の高いところに対して適切な市街地選択方法を都市計画的に明らかにすることを全体構想とするものである.本研究では,特に水害に対して脆弱で,軟弱地盤のため高層の建築物を建てるのが困難な佐賀低平地を対象とし,まず局所的な人口予測を行うことにより,水害リスクが将来的にどのように変化するのかを明らかにする.さらに,水害リスクを低減させるための市街地の集約化の方向性について,「コンパクトシティ・プラス・ネットワーク」の視点から,高層化による都市機能の集約化の限界及び交通ネットワークの構成に着目し,区域区分や用途地域の設定の変更,立地適正化計画策定などに資する基礎的知見を明らかにすることを目的とした. 平成26年に都市再生特別措置法が改正されたが,この制度は,都市計画区域や市街化区域の中の都市的な土地利用をさらに選択的に集約させていくエリアを指定していく計画を自治体ごとに地域の事情を考慮して立案していくものであり,本研究は佐賀低平地をケーススタディとして低平地の都市の市街地整備の在り方を考えていく上での手がかりとなることを期待して取り組んだ研究である. 研究成果としては,以下の4点を明らかにした. 1)小単位での人口予測を行うことにより,2040年までの人口分布の変化,2)水害履歴と人口予測の結果より,地域ごとの水害リスクの高低,3)水害リスクの高い地域,低い地域それぞれにおける人口と都市機能の量,4)交通ネットワークで繋がった水害リスクの低い場所において市街地を形成した場合において人口と都市機能を集積できる限界点と都市計画制度の設定の在り方
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