本研究では、空き家を中心とした建物のリノべーションを媒介とするヒト・モノ・コト・空間の連鎖的ネットワークをCo-Renovation(以下CR)と定義する。CRが、リノべの枠組みを「建築単体の一時的な保存と改修」から「建築単体から地域まで含めた持続的な活用と再生」へと転換し得ることを検証し、 CRの促進条件と有効性の解明を通して、実践に向けた計画技術の確立を目指すものである。 本年度は、神戸市垂水区塩屋町を主な対象にリノベ実施者に対する調査を実施し、これまでの調査結果の比較分析を行った。CRの促進条件(制度・マネジメント・空間・建築再生プロセス)とCRの有効性(事業性・空間の独自性と公共性・コミュニティ・建築とまちへの意識)との相互関係の体系的な解明を試み、その成果の一部を日本建築学会大会学術講演会において口頭発表した。来年度には研究成果をとりまとめ、都市住宅学会および日本建築学会の査読付き論文に投稿する予定である。また、福岡ではCRの計画技術を実践の場へ展開しており、具体的な空き家と空き店舗の再生提案を行った。土地建物の所有者が複数存在することや耐震診断をともなう改修費が嵩むことなどから予定通り進んでいないものの、空き家など建築ストックの再生を通した地域再生を円滑に進めるためには、所有権等の問題が深刻化し活用困難な空き家になることを未然に防ぐ予防の計画技術を開発することが求められるという新たな課題が見出された。一方、今年度3月に日韓研究者でのCRに関する国際シンポジウムを開催予定であったが、新型コロナウイルの影響で中止した。そのため、今後このようなシンポジウムを開催するとともに、論文発表、地域発表、web記事への投稿を行い、研究成果を社会に還元するよう努める。また地域での活動を継続しながら、建物所有者・地域・行政などとの議論を通してCRの計画技術の精度を高めていく。
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