今年度は,まず,2019年度に行った,高経年団地である東京都板橋区の高島平団地を対象とした調査・分析成果の論文化を行った.一つ目の距離以外の買い物環境評価と買い物の不便・不自由との関係の解明と,買い物の不便・不自由が人々の食事摂取に与える影響の検証を行った成果は,日本都市計画学会の都市計画論文集に掲載された.二つ目の,買い物弱者の対策事業である移動販売事業の利用実態の分析と,潜在的買い物弱者の問題解決に果たす効果・意義を論じた結果は,国際誌に形成された. また,研究期間の延長を許可いただいたので,今年度は買い物環境の不便が,買い物におけるいかなる物的環境要因に由来するのかを明らかにするため,追加の調査を行った.東京都に居住し,普段から徒歩で買い物を行う人々を対象にウェブアンケートを実施し,買い物環境全体の評価や,店舗アクセス・店舗質の不便の評価,さらにこれらの不便に関わりうる道路環境要因や店舗内の設備サービスの不満度などの調査データを収集した.単純集計までを終え,現在分析を深めている最中である. さらに,今年度はコロナ禍で様々な日用品の買い占め行動が発生した.平常時は特に不自由なく買い物ができたとしても,非常時に商品を購入できず,不満や不自由を感じる人々も多く発生した. 今後の類似の問題の発生可能性も高く,その実態把握を行う事は学術的な価値も高いと考えた.そこで,非常時において商品を十分に購入できず,買い物に不自由を感じる人々を広義の潜在的買い物弱者と捉えて,この事態下での人々の買い物行動・意識や問題の発生要因を調査した. 分析の結果,この様な事態下での人々の買い物行動は,あくまで日常の店舗選択の延長線上にあるが,それが時空間的に過度に集中することで問題に繋がっていた.さらに不自由を感じやすい人々の属性を明らかにし,以上をまとめた結果を公表した(国際会議で報告し,国際誌へ投稿中).
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