研究課題/領域番号 |
17K14786
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
冨安 亮輔 東洋大学, 理工学部, 助教 (40755253)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 仮設住宅 / 再利用 / 東日本大震災 / コミュニティ |
研究実績の概要 |
東日本大震災の被災地では基盤整備と災害公営住宅建設が進む一方、仮設住宅の閉鎖と集約化が議論に上がっている。建設された約5.3万戸の仮設住宅が役目を終えた時、それらはどのように処分あるいは利活用されるのだろうか。既往研究からプレハブ型仮設住宅の方向性はある程度判明している。一方、木造仮設住宅が1万戸以上建設されたのは東日本大震災が初めてのことであり事情が異なると予想され、(a)産業廃棄物として処分(b)部材毎にリユース/リサイクル(c)解体移築し恒久住宅(d)解体移設しコミュニティ施設等に用途変更、という4つの道筋を辿るという仮説を持っている。そこで、本研究は木造仮設住宅の利活用について建築計画・建築構法の両面からモデルの構築を目的としている。「ゴミとしたくないから」「もったいないから」という消極的な理由だけでなく、震災記憶の風化防止・防災教育拠点として積極的に捉え、特にコミュニティ施設へ用途変更する実践的計画論を得ることを目指している。具体的には、(A)過去の災害における木造仮設住宅のリユース・リサイクルの事例を把握し歴史的・社会的な文脈とともに再考、(B)東日本大震災で建設された木造仮設住宅の閉鎖・集約化・再利用の事例を比較分析し利活用モデルの体系的整理、(C)岩手県でコミュニティ施設へ転用予定のパイロット事例を対象として用途変更・恒久化する空間整備手法と周辺地域に与える効果やメカニズムの検証、以上3点を明らかにすることである。2017年度は(A)と(C)の課題に重心をおきつつ(B)にも取り組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(A)過去の災害事例の考察:関東大震災以来、仮設住宅が相当数建設された災害事例を対象として、仮設住宅生活の終盤の様子や閉鎖の仕方、利活用の状況、制度について、学術誌を中心とした文献調査を行い整理した。その上で、酒田市や島原市など地元の図書館に保管されている郷土史資料、当時の地方新聞記事を網羅的に調査し、社会的状況との関連を詳細に分析した。 (B)東日本大震災の東北三県の事例の体系的整理:報道や行政資料を逐次収集し、全体の状況を漏らさず把握している。その中で木造仮設住宅を解体移築し、災害公営住宅として恒久化した福島県会津若松市、行政担当者へ経緯と工事についてインタビュー調査と現地調査を行った。しかし、まだ事例数は少なく、十分といえない。 (C)コミュニティ施設転用のパイロット事例の検証:東日本大震災発災以来、研究代表者が関わり続けている岩手県遠野市では、木造仮設住宅の部材を再利用した災害公営住宅の建設と地域のコミュニティ施設の計画が進んでいる。当初、1件目のコミュニティ施設の計画は2018年度の予定であったが、災害公営住宅の居住者や地域住民との話し合いが2017年度から始まった。仮設住宅サポートセンター内でのワークショップや、地元工務店との意見交換など行い、具体的な計画案を検討した。さらに、同じく岩手県住田町の木造仮設住宅を大船渡市恋し浜に移築しコミュニティ施設とするプロジェクトとも連携している。活動メンバーにインタビューするだけでなく実際の作業に参加し、詳細にプロセスを把握した。
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今後の研究の推進方策 |
課題(B)について、2017年度は仮設住宅の退去が岩手県と宮城県で進み、2018年は閉鎖計画の全容が見えてくると考えられる。集約・閉鎖・再利用の状況を仮設住宅の契約種ごと構造形式ごとに把握する。そして市町村レベルでの木造仮設住宅の再利用先行事例について、行政担当者や施工者等にインタビューし、利活用モデル構築のための比較事例を収集する。課題(C)について、引き続き遠野市ではコミュニティ施設が設計・建設される。恋し浜の事例と比較しながら、研究代表者がそのプロセスに直接関わることで木造仮設住宅の用途変更・再建築化の課題と効果を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、遠野市のコミュニティ施設の計画は2018年度を予定していたが、災害公営住宅の居住者や地域住民との話し合いが2017年11月から始まることになり、ワークショップや調査、関係者との打ち合わせを実施するための旅費を前倒し申請した。しかし、年度末にかけ降雪量が多かったり敷地の変更などが生じ、行政と話し合った結果、年度をまたいで進めることになった。繰り越す研究費は引き続き、旅費に使用する。
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