研究課題/領域番号 |
17K14788
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
西本 雅人 福井大学, 学術研究院工学系部門, 講師 (10710816)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 遊び / 体力 / 基礎運動能力 / 36の動作 / 遊び環境 / 活動量 / 歩数 / 保育 |
研究実績の概要 |
昭和60年から現在にかけてこどもの体力は低下傾向にあることを受けて平成24年に「幼児期運動指針」にて幼児期は多様な動きの幅広い獲得する大切な時期であると示された。この時期の子どもを受け持つ保育施設は安全・安心に遊べる環境を提供し、この多様な動きを保障していく役割を担う。本研究ではこの多様な動きを保証する遊び環境の整備を図るために、①異なる遊び環境での多様な動きの種類と遊び環境の要素との関わり、②遊び環境とこどもの体力の関係、③運動能力の差によるこどもの行動パターンの特性、の3つの内容を明らかとする。全園児を対象とした①・②で遊び環境と動作、体力の関わりを明らかにした後、個人の特性を考慮した論を展開するために③を行う。 2018年度では2017年度に引き続き①と②の研究に着手した。①の【遊び環境と動作】では園内を巡回観察調査を行い、10分間おきに子どもの基礎運動能力に必要とされる36種類の動作を把握した。2017年度では遊びに含まれる動作の種類数を明らかにし、2018年度では2年以上継続して調査している園で遊び行為の分布の経年変化を比較した。その結果、園の環境の違いによって遊び行為の分布が異なること、遊び行為によって獲得できる動作が異なること、「泳ぐ、こぐ、当てる、捕る、渡す、倒す」の動作は遊び環境を用意するだけでは獲得が難しい動作であることを特定できた。 ②の【遊び環境と体力】では3-5歳の全園児を対象に6種目の体力テストと歩数の把握を行なった。2017年度は体力テストと歩数の相関、2018年度は経年ごとの体力テストの比較を行った。結果として遊び環境が豊富に用意されている新園舎で過ごしているこどもの方が体力テストの結果が良い傾向が見られ、遊び環境の豊富にあることが体力の向上に影響していることを示唆できた。 これらの成果は日本建築学会で発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2017年度、2018年度では①と②の研究に着手し、調査対象施設の選定、調査の実施、調査データの1次集計を行うことを研究計画としていた。 ①【遊び環境と動作】観察調査のビデオデータから滞在場所、グループ、遊び内容、動作の種類を特定した。調査は各園での1回以上を基本とし、通常の保育時の日を調査日に設定している。研究計画では遊び環境が異なる8園で行うことを掲げていたが、現在までに7園で実施した。それらのデータは各場所での動作の種類数や頻度などの単純集計までは終了した。 ②【遊び環境と体力】6種目の体力テストを各園で実施している。3-5歳の全園児を対象に8園で約2600人計測し、各園でのテスト結果の比較や歩数との相関を行なった。施設は4タイプに分類して、各タイプ1施設以上の4施設での3年間の体力テストを実施することを計画していた。予備調査の成果を踏まえると、2園は4年間、2園は3年間、2園は2年間、2園は1年間のデータを集めることができた。 以上から順調に調査対象数を増やすことができ、分析するための基礎データの整理を行なえているため、研究は概ね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
①【遊び環境と動作】一時集計の結果を踏まえて、遊び環境の要素と遊び内容の関係について詳細に分析する。園内を7つの環境要素に分類して、それらの要素ごとにどのような遊びや動作が行われやすいのかについて関係図を提示することを目標とする。関係の強さは要素ごとに見られた遊びや動作の割合を指標として用いる予定である。また、調査期間中に新園舎に移行した園が3園あるため、環境の変化がこどもの遊びにどのような変化をもたらせてたのかも明らかとする。 ②【遊び環境と体力】今年度も継続して体力テストを各園で進めていく。研究期間内には5園で3カ年の体力テストのデータを収集できる予定であり、子ども保育施設で過ごす中で体力の伸び率を把握できる。①の成果を踏まえ、動作数、施設規模、遊び環境の要素の違いによって、体力テストの伸び率がどのように異なるのかを明らかとしていく。 ③【個人の行動パターンの特定】2019年度に主に研究を行う予定である。予備調査は昨年度に実施したので、そのデータを元に調査方法と集計方法を検討する。前年度の体力テストの結果を踏まえ、4歳児、5歳児の上位・下位25%の層にいるこどもを数名調査対象に選定する。その行動パターンの違いによって体力テストの成績、動作数の傾向を明らかとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
概ね予定通り使用したが、2018年度の調査報告の印刷費用として確保していた金額が次年度に繰り越した。体力テストを依頼した園からのデータ送付が年度末であったため調査報告の時期がずれたためである。 未使用額は2019年度の調査報告の印刷費や郵送費として使用する予定である。
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