昭和60年から現在にかけてこどもの体力は低下傾向にあることを受けて平成24年に「幼児期運動指針」にて幼児期は多様な動きを獲得する大切な時期であると示された。この時期の子どもを受け持つ保育施設は安全・安心に遊べる環境を提供し、この多様な動きを保障していく役割を担う。本研究ではこの多様な動きを保証する遊び環境の整備を図るために以下の3点を明らかとした。 【異なる遊び環境での多様な動きの種類と遊び環境の要素との関わり】園内を巡回観察調査を行い、10分間おきに子どもの基礎運動能力に必要とされる36種類の動作を把握した。2017年度では遊びに含まれる動作の種類数を明らかにし、2018年度では2年以上継続して調査している園で遊び行為の分布の経年変化を比較した。その結果、園の環境の違いによって遊び行為の分布が異なること、遊び行為によって獲得できる動作が異なること、「泳ぐ、こぐ、当てる、捕る、渡す、倒す」の動作は遊び環境を用意するだけでは獲得が難しい動作であることを特定できた。 【遊び環境とこどもの体力の関係】3-5歳の全園児を対象に6種目の体力テストと歩数の把握を行なった。2017年度は体力テストと歩数の相関、2018年度は経年ごとの体力テストの比較、2019年度は個人ごとの3年間の伸び率を明らかとした。結果として遊び環境が豊富に用意されている新園舎で過ごしているこどもの方が体力テストの結果が良い傾向が見られ、遊び環境の豊富にあることが体力の向上に影響していることを示唆できた。 【運動能力の差によるこどもの行動パターンの特性】2019年度に運動能力の差による獲得動作数を比較した。前年度の体力テストの結果を踏まえ、4歳児の上位・下位25%の層にいるこどもを3園24名選定した。一日の行動観察を行った結果、動作の獲得種類数が多い園児ほど体力得点が高いという結果を得られた。
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