研究課題
本研究では、Fe2VAlホイスラー型熱電材料への第四元素ドープ効果について、放射光X線を用いて、原子レベルで解析を行った。特に、熱電性能向上につながる、ドーパントによる熱抵抗の上昇効果について検討した。昨年度までに放射光実験に必要な単結晶試料の育成及び、放射光施設SPring-8における実験を実施してきた。今年度は、ノンドープ及びTaドープのFe2VAlに関して得られたデータの解析と成果のとりまとめを行った。まず、X線非弾性散乱によって得られた、フォノンの分散関係について検討した。ノンドープのFe2VAlのフォノン分散は第一原理計算の結果とよく一致することを確認した。一方、詳細な解析の結果、Taドープ試料では、ノンドープには見られない新たな振動モードが現れることが分かった。これは、ドーパントであるTaと置換元のVの質量比から、重元素の共鳴モードと呼ばれる振動モードであると考えられる。次に、同じ単結晶試料を対象行った蛍光X線ホログラフィーの結果の検討を進めたところ、置換元のVと比較してドーパントのTaは周囲の元素との相対的な位置揺らぎが、極めて小さいことが分かった。同様の結果は、X線吸収微細構造測定からも得られている。これは、実空間上での共鳴モードの特徴をよく反映しており、X線非弾性散乱の結果と符合する。以上の結果により、Fe2VAl中のドーパントの振動状態の詳細が明らかになった。この情報は、ドーパントが熱抵抗上昇に及ぼす影響を評価する上で基礎的な知見であり、熱電材料開発の発展に寄与すると考えられる。
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Physical Review B
巻: 101 ページ: 024302-1 - 10
https://doi.org/10.1103/PhysRevB.101.024302
http://structure.web.nitech.ac.jp/