研究課題/領域番号 |
17K14805
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
齊藤 元貴 北海道大学, 工学研究院, 特任助教 (00749278)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | セラミックス / 解析・評価 / ドーパント / 3Dイメージング / HAADF-STEM |
研究実績の概要 |
蛍光体材料や半導体等の分野では、材料中に微量のドーパント原子が添加される。これらドーパント原子の空間分布の解析は、その特性を理解する上で重要である。本研究では、フォーカスを変化させながら像を撮影するスルーフォーカスHAADF-STEM法を用いてドーパントの3次元分布解析法を確立することを目的とした。
平成29年度は、黄色蛍光体であるEuドープCa-αSiAlON中のEu原子の空間分布解析を対象とした。最適な観察条件を検討するために、マルチスライス法によるSTEM像のシミュレーション計算を行った。デフォーカス量を変化させた際の[0001]および[1000]入射におけるEuドープCa-α-SiAlONのSTEM像を計算した結果、ある原子カラムにおいてEu原子のZ方向の位置とデフォーカスが一致したときに像強度が最も高くなり、収束半角が大きいほど深さ分解能が向上することがわかった。
実際にHAADF-STEM観察を行うために、EuをドープしたCa-αSiAlON蛍光体を準備し、励起・発光スペクトルおよび拡散反射スペクトルを測定した後、機械研磨およびArイオン研磨により薄膜化し、TEM観察用試料とした。球面収差補正走査透過型電子顕微鏡(Titan3 G2 60-300)を用い、[0001]方向からHAADF-STEM観察した。30mradの収束半角でデフォーカス量を0.68nmごとに変化させながら、約10nmの立方体の領域を分析した。像のドリフトを補正後、原子カラム強度とフォーカスの関係を調べた結果、特定の原子カラムにおいては、フォーカス位置によって像強度が大きく変化しており、計算結果との対応から、最も像強が高くなったフォーカス位置にEuが存在する可能性が示された。観察領域すべてのEuの空間分布を解析した結果、Euは試料中にランダムに分布していることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の実施計画に掲げた通り、マルチスライス法によるSTEM像のシミュレーション計算により最適な観察条件を決定した後、実際にSTEM像計算によりEuドープCa-αSiAlON中のEu原子の空間分布を解析できたため、研究はおおむね順調に進展していると言える。Euが同一原子カラムに隣接して存在する場合もあり、深さ分解能のさらなる向上が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、電子線の入射方向の影響を調査し、YAG:Ce蛍光体およびEuドープガラス蛍光体を観察対象とする予定である。
電子線の収束半角を大きくするほど深さ分解能が向上するが、一方で色収差の影響が大きくなる可能性があり、この点について像計算を用いて検討する予定である。
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