研究実績の概要 |
紫外光励起白色LEDへの適用を目的とするレアアースフリー酸化亜鉛系蛍光ナノ細線のベースとなる黄色及び青色蛍光薄膜の内、平成29年度はタングステンを含む青色蛍光体薄膜形成プロセスについて研究を重点的に推進した。タングステンを導入した亜鉛タングステート(ZnWO4)は460nm付近に発光ピークを持ち、既に一部研究が進行していた黄色蛍光体材料(亜鉛オルトバナデート)の補色を呈する事を期待した。本薄膜は、金属タングステンチップを配置した酸化亜鉛ターゲットを用いてRFマグネトロンスパッタリング法により石英基板上に堆積する。その後、酸化雰囲気中で短時間のランプ加熱処理を施し、蛍光体とする。熱処理前の薄膜は極度の酸素欠乏状態であり、酸化プロセスを経て初めて蛍光を呈する。薄膜中のタングステン対亜鉛モル比率は約0.3から7.0、熱処理温度は700-900℃の範囲として試作したところ、熱処理温度は酸化を促すために高温であるほど内部量子効率が増加した一方、モル比率は酸化物組成を変えるために内部量子効率に強く影響することが分かった。本蛍光体薄膜はZnWO4だけでなくWO3も含むが、WO3を多く含む場合に量子効率はほぼ0%にまで低下した。文献によると粉状WO3の内部量子効率は数十%と示されており、本薄膜においてその蛍光作用が消失する機構については引き続き検討が必要である。WO3比率が低い蛍光体膜では最高で40%の内部量子効率を示した。この膜の発光色を色度座標で表すと(x, y)=(0.21, 0.29)である。
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