紫外光励起白色LEDへの適用を目的とするレアアースフリー酸化亜鉛系蛍光ナノ細線のベースとなる黄色及び青色蛍光薄膜(以下それぞれVZO及びWZO薄膜)の内、平成29年度はタングステンを含む青色蛍光体薄膜形成プロセスについて、平成30年度は混色制御のために青色及び黄色蛍光体薄膜積層化に係る研究を重点的に推進した。WZOとVZO薄膜は石英基板上にRFマグネトロンスパッタ法を用いて室温にて堆積し、積層シーケンスは1層堆積毎に酸化を施す層毎酸化方式(L型)と2 層堆積後に酸化を施す単回酸化方式(B型)を用いた。基板上がWZOの場合(V/W-L、V/W-B)とVZOの場合(W/V-L、W/V-B)の計4構造で発光特性を評価している。VZO及びWZO薄膜の量子効率はそれぞれ約40%と50%となる条件を採用し、膜厚は100もしくは50 nmのものを組み合わせた。先ず、単回酸化方式サンプル(W/V-B、V/W-B)では発光色の混合が見られず、VZO単層に近い黄色蛍光が観測された。これは膜厚にもよるが単回酸化では亜鉛バナデートの析出が生じやすいためである。一方、層毎酸化方式では色の混合が生じ、色度図上でVZO及びWZOの色度座標を結ぶ直線上に発光色が得られた。上層膜厚が薄いものほど量子効率は高まったが、高々34%に留まった。単層で見られていない何らかの消光要素が生じたと疑われるが、その具体的な原因の同定にまでは至っていない。 本研究課題では、白色LEDの生産性向上に資すると考える各色蛍光体薄膜並びにその単純積層構造の形成及び発光様態までを明らかにした。リソグラフィを経ずに混色可能な蛍光薄膜形成プロセスを見出した点は工業的に重要な成果である。
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