最終年度にあたる平成30年度は、(1)HfO2基エピタキシャル薄膜における強誘電相発現過程の解明、(2)HfO2基エピタキシャル薄膜の厚膜化と強誘電特性の膜厚依存性、また(3)HfO2基薄膜におけるドメインスイッチングについて検討した。 (1)HfO2基エピタキシャル薄膜における強誘電相発現過程の解明ついては、(111)イットリア安定化ジルコニア上に室温で成膜したYO1.5をドープしたHfO2基エピタキシャル薄膜について、高温X線回折測定を用いたその場観察を行った。実験の結果、室温で成膜した薄膜は単斜晶として薄膜に堆積しており、高温で正方晶相に相転移し、その後冷却過程で斜方晶相に相転移することが分かった。これまで、強誘電相である斜方晶相は安定相である単斜晶相から熱処理によって相転移することはないと考えられていたが、本系ではそのような相転移が起きていることが明らかになった。 このような性質を利用することによって、今まで不可能と考えられていた厚膜の作製が可能となり、(2)について行った。結果として930nmという1 μmスケールの膜厚においても強誘電性の発現を確認した。さらにこの材料系では、厚さによって抗電界がほとんど変わらないという特徴を持っていることが明らかになった。 (3)HfO2基薄膜におけるドメインスイッチングについては、昨年度放射光X線回折測定によって明らかにした電界によるドメインスイッチングについて、走査透過電子顕微鏡についても確認した。
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