研究課題/領域番号 |
17K14808
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
柳田 さやか 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (40579794)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 水素 / 表面科学 / 触媒 / マイクロバブル / 表面ぬれ性 |
研究実績の概要 |
・触媒調整及び親水性の評価 触媒の調整条件を検討し、水素発生に高い活性を示す白金担持酸化チタン膜を石英基板上に作製することに成功した。塩化白金酸と犠牲剤を用いた通常の光電着の条件では白金の担持量が少なく十分な活性が出なかったが、塩化白金酸に対して4等量の水酸化ナトリウムを加え1日攪拌したのちに光電着を行うことによって酸化チタン膜状に白金が高密度に析出した。このように作製した平板状触媒 (25×50 mm) で25 mMアンモニアボランの分解反応を行ったところ、初期速度34cm3/minで水素発生を行うことに成功した。作製した触媒について水の接触角の評価を行ったところ、紫外線照射前の水の接触角は83度、照射後は10度であった。一方、水中での泡の接触角に関しては、親水化前後で156度、160度とあまり大きな変化は見られなかった。 ・撮影条件の検討 水素泡の撮影について、各種撮影条件の検討を行った。作製した触媒から生じる水素泡は小さなもので50マイクロメートルほどであり、これを鮮明に撮影するための撮影条件と光学系について最適化を行った。テレセントリックレンズとTVレンズの組み合わせでマイクロバブルを撮影するのに十分な倍率が得られたので、続いてシャッタースピードと撮影間隔について検討を行い、シャッタースピード1/1000秒以下で上昇する水素泡の画像を鮮明に撮影することに成功した。また、泡を撮影しやすくするための治具の検討・製作を合わせて行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度は触媒調整及び実験系の構築に多くの時間を割いた。白金の担持法についての検討を進めることができた一方で、作製した白金担持触媒の表面を疎水化する方法については現在も検討を継続している。研究計画では疎水的な表面を実現するためにシランカップリング剤での表面修飾を行う予定であったが、シランカップリング剤同士でも重合反応が起こるため、反応条件によっては白金微粒子上にも単分子膜が形成してしまう恐れがある。そこで、現在は水分の存在下でも重合せず塩基性基板上に単分子膜を形成する性質を持つホスホン酸の各種誘導体の利用を試みている。これにより白金粒子表面を修飾剤が覆うことなく担体表面を疎水化できるものと考えている。濡れ性のコントロールという点では研究計画から遅れが生じているが、より再現性よく、かつ触媒自体の活性に影響の少ない形で表面修飾が行えるよう実験条件の検討を行っている。 実験系の構築に関してはほぼ予定通り進行している。水素発生及びマイクロバブル撮影について共同研究者と打ち合わせと試行実験を繰り返しレンズ等の選定と、撮影に必要な治具の設計・製作を行った。撮影時のシャッタースピードは短いほど残像の少ない鮮明な画像が撮れるがその一方で画面が暗くなる。高輝度照明を用いて試行実験を重ね、鮮明なバブルの鮮明な画像が撮れる条件を見いだした。共同研究を行っている東京工業大学でバブルの撮影に成功した他、山梨大学でもカメラ・レンズ・照明器具などを揃えバブル撮影をするための装置を導入した。
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今後の研究の推進方策 |
29年度に引き続いて、ホスホン酸誘導体を用いて平板状触媒の修飾を行う。ホスホン酸誘導体は金属酸化物表面のOH基と反応し表面に単分子膜を作る性質があるため、末端がアルキル鎖のものを用いることで触媒表面の疎水化が可能である。UV-オゾン処理により表面有機物の除去を行ったPt担持または非担持のTiO2膜をホスホン酸誘導体のエタノール溶液に浸漬することで触媒表面に単分子膜を形成させる。鎖長や官能基の異なる誘導体を使用して修飾を行い、その濡れ性を接触角計で評価する。また基板全体を液中に浸漬させ、水中での空気泡の接触角についても調査する。 表面修飾によって疎水化した触媒及び光照射によって親水化した触媒を用いて水素の発生実験を行い泡のサイズ及び水素の発生量と表面濡れ性の関係についての調査を行う。触媒表面の濡れ性は水素泡の離脱挙動に影響すると考えられることから、同一条件でアンモニアボランの分解実験を行い水素発生の様子をハイスピードカメラで撮影し画像解析より水素泡の径や水素の発生から離脱までの泡の挙動がどのように表面濡れ性を反映するかを調べ、気体発生反応に有利な触媒表面についての考察を行う。 平板状の触媒を使った検討の後、より触媒表面と水素との接触時間の長くなるカラム系で同様に触媒表面の濡れ性と水素泡の挙動についての調査を行う。具体的にはガラスビーズに触媒を担持したものを充填したカラムを作製し、これにアンモニアボラン水溶液を通して水素発生を行う。この系では触媒表面で発生した水素泡が付着と離脱を繰り返してカラムを抜けていくので、平板の系よりも表面の特性が活性に大きく影響する可能性がある。
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