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2017 年度 実施状況報告書

酸素欠陥を利用するガラスコーティング層の濡れ性のチューニングと機能化設計

研究課題

研究課題/領域番号 17K14810
研究機関名古屋工業大学

研究代表者

前田 浩孝  名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20431538)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2019-03-31
キーワード濡れ性 / ガラス / コーティング
研究実績の概要

固体表面の濡れ性はセルフクリーニングや防曇特性などの機能性を付与する上で重要な役割を担う。本研究ではガラスコーティング層の濡れ性を制御するため、構造内に酸素欠陥を導入する新しい設計指針を提案することを目的とする。
スパッタ法を採用し、コーティング層内に酸素欠陥を導入し、濡れ性を変化させるしくみを構築するため、作製方法検討を行った。ターゲットとしてSiO2ガラス、基板材料(シリカガラス)に使用したスパッタ条件を種々検討することで、ガラスコーティング層を作製することができた。
次に、SiO2-Na2Oガラス、SiO2-Na2O-CaOガラスについてもスパッタ法によりコーティング層を作製することに成功した。その濡れ性を評価した結果、組成によらずターゲットに用いたガラスよりも、コーティング層の方が濡れ性が向上することを明らかにした。分光分析結果から、いずれの組成においてもコーティング層中に同種の酸素欠陥が形成することが示唆された。また、水、ヘキサデカン、ポリジメチルシロキサンを用いた接触角測定結果から、ターゲットガラスとコーティング層の界面自由エネルギーはほぼ同じであるが、固体の表面自由エネルギーが酸素欠陥の導入により増加することが分かった。
現時点では、コーティング層への酸素欠陥の導入により濡れ性が向上することを明らかにでき、次年度以降は欠陥形成メカニズムや、その欠陥と濡れ性との関係性の解明を進めるとともに機能性材料の新規表面設計指針を検討していく予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初予定していたガラスコーティング層を作製するためのスパッタ条件を選定することができ、ターゲット組成を変えた際の濡れ性評価を実施することができた。
ターゲットに用いたシリカを主成分とするガラスの接触角は10°程度であるが、作製したコーティング層では接触角が6°程度となり、濡れ性が向上することが分かった。コーティング層上での液滴の挙動についても調査を進め、酸素欠陥の存在が濡れ広がりに影響を及ぼすことを見出している。ESRスペクトル法により、コーティング層中に酸素欠陥が形成することが示唆された。これらにより酸素欠陥と濡れ性の関係性について解明できつつあるが、より詳細な調査が必要である。通常ガラスの濡れ性はその組成により制御されるが、酸素欠陥を利用したガラスコーティング層の濡れ性制御は新しい知見となる。

今後の研究の推進方策

ガラスコーティング層の濡れ性を酸素欠陥で制御する新しい知見を得ることができたため、体系化することを目指し、今後は特にターゲット組成をリン酸ガラスに変更した場合の濡れ性に及ぼす影響について検討する予定である。また、スパッタ時の雰囲気ガスを制御することで、酸素欠陥の形成への影響が想定されるため、この観点からも検討を進める。
酸素欠陥の形成に伴い紫外領域に存在するガラスの吸収端の変化が引き起こされることを見出している。紫外線照射により濡れ性の変化が想定されるため、紫外線を用いた濡れ性制御についても可能性を検討したい。また、濡れ性は表面の構造にも影響を受けるため、微細加工を施した表面へのスパッタ法によるガラスコーティング層の作製方法について検証する。
各テーマを融合することで、ガラスを用いたこれまでにない機能化表面の設計指針の提案を目指す。

次年度使用額が生じた理由

本年度計画していたガラスコーティング層を作製するためのスパッタ条件の選定に関わる物品購入費を主な支出として計上していた。作製条件の決定に関する研究が想定以上に順調に進んだことで、物品費の消費が抑えられた。次年度実施予定の異なるガラス組成を用いたコーティング層の作製において、試薬等を購入する必要があるため、当該年度の残額分について物品費として調整し使用する計画である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2017

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 酸素欠陥導入によるガラス薄膜の濡れ性の変化2017

    • 著者名/発表者名
      千野光晶、前田浩孝、春日敏宏
    • 学会等名
      日本セラミックス協会平成29年度東海支部学術講演会

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公開日: 2018-12-17  

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