フェライト磁石は広く利用され、現行品は少量のCo置換による保磁力の増大で商品価値が高められている。実用磁石では特定のCo濃度で保持力が極大を示すことが知られているが、近年申請者らは、その極大を示す濃度が母材中のCo固溶上限に対応することを明らかにした。従って母材中の Co 固溶上限を拡張できればさらに性能が向上する可能性がある。予備的な実験から、合成雰囲気の制御によりCo固溶上限を従来の倍程度増加させられる確証を得ており、保持力の主要因である異方性磁界はさらに30%程度増強できると期待された。本研究では合成雰囲気制御によるLa-Co置換SrMフェライトのCo高濃度化を通じ、フェライト磁石の高性能化を目指した。 本研究ではまず、La-Co置換SrM(Sr1-xLaxFe12-yCoyO19)のLa-Co置換量と反応酸素分圧との相関を解明した。その結果、大気雰囲気で焼成した試料では、Co置換量の上限がおよそy=0.3程度である一方、酸素雰囲気下ではその上限が劇的に上昇することが判明した(pO2=1atmでは0.7程度、PO2=400 atmではy=1)。これは当初予想した上限値y=0.5を大幅に超える期待以上の成果である。また得られた試料を用いて磁気異方性を評価したところ、Co置換量に比例しており、最大置換が達成された試料においては、非Co置換SrMの約3倍の値が得られた。 これらの成果は、高圧酸素雰囲気下で合成された高濃度Co置換La-Co SrMフェライトが、新規高性能フェライト磁石の母材として有望であることを示している。
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