研究課題/領域番号 |
17K14812
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
布谷 直義 大阪大学, 工学研究科, 助教 (40715314)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 環境触媒 / メタン / 揮発性有機化合物 / 酸化触媒 / 希土類 |
研究実績の概要 |
本研究では、温室効果ガスであるメタン、および人体や環境に有害な揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds; VOC)を、100℃以下の極めて温和な条件下で完全燃焼可能な新しい環境触媒の創製を目的としている。 平成30年度は、自動車排ガス用助触媒であるCeO2-ZrO2複合酸化物に、低価数であり、かつ価数変化しやすいFe3+/2+を添加することで、格子内の酸化物イオン伝導性を向上させ、かつ酸化還元能を付与させたCeO2-ZrO2-Fe2O3を創製した。これを助触媒とし、PdO活性種とともに高比表面積担体(γ-Al2O3)に担持させたところ、PdO/CeO2-ZrO2-Fe2O3/γ-Al2O3触媒が、これまでに報告されている中で最も低温である280℃でメタンを完全分解できることが明らかになった。 さらに、VOCの一つであるトルエンを分解対象とし、CeO2-ZrO2にNi2+/3+イオンを添加したCeO2-ZrO2-NiOを、Ptとともにγ-Al2O3に担持したところ、100℃という極めて温和な条件でトルエンを完全分解できることも明らかにした。 また、新規な助触媒として、酸化物イオン伝導体であるアパタイト型ケイ酸ランタン(La10Si6O27)にCo2+/3+を添加した材料を合成したところ、La10Si5CoO27-dが酸素を効率的に供給できることを明らかにした。さらに、これをPdOとともにγ-Al2O3に担持したところ、助触媒として機能し、メタンを320℃で完全分解できることも明確にした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
環境触媒における助触媒の特性を向上させるために、CeO2-ZrO2のCe4+やZr4+よりも低価数であり、かつ価数変化しやすいFe2+/3+やNi2+/3+を導入したところ、格子内の酸化物イオン伝導性が向上し、かつ酸化還元能が向上したことにより、酸素を効率よく活性種まで供給できることを明らかにした。さらに、これらを助触媒として用いることにより、非常に高い活性(メタンを280℃で、トルエンを100℃で完全分解)を実現している。 さらに、助触媒の酸素供給能、およびイオン伝導性や酸化還元能との関係性を、電気化学的な手法を用いることにより明確化している。これらの知見を基に、全く新しい観点として、酸化物イオン伝導性固体電解質であるアパタイト型酸化物を母体とした新規な助触媒を創製し、高い酸素供給能を示すことを見出した。 これらの成果は、既に原著論文として掲載されている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究にて、助触媒の酸素供給能は、酸化物イオン伝導性や酸化還元能に影響することがわかっている。しかし、触媒活性には、触媒の表面状態や粒界状態も依存すると考えられる。そこで、触媒活性に与える助触媒、表面の吸着酸素、触媒形態などの寄与を明確にするため、電子線顕微鏡観察、X線光電子分光測定、比表面積・細孔分布測定、in situ 赤外分光測定、さらには同位体酸素を用いた触媒活性試験を行う。得られた知見を触媒設計にフィードバックすることにより、メタンやVOCの酸化温度のさらなる引き下げを行う。触媒材料としては、CeO2-ZrO2系やアパタイト型酸化物系以外も視野に入れ、最終的に室温付近で機能するメタン、VOC完全燃焼触媒の創製を目指す。
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