本研究では、温室効果ガスであるメタン、および人体や環境に有害な揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds; VOC)を、できる限り温和な条件下で完全燃焼可能な新しい環境触媒の創製を目的としている。 2018年度は、自動車排ガス用助触媒であるCeO2-ZrO2複合酸化物に、低価数のBi3+を固溶させることにより酸化物イオン欠陥を形成させ、酸化物イオン伝導性を向上させたCeO2-ZrO2-Bi2O3を創製した。これを酸化触媒であるPtとともに高比表面積のγ-Al2O3に担持したPt(0.7wt%)/Ce0.68Zr0.17Bi0.15O2-δ(16wt%)/γ-Al2O3触媒を創製したところ、ホルムアルデヒドを室温付近(20℃)で完全分解できることを明らかにした。 また、新規な助触媒として、酸化物イオン伝導体であるアパタイト型ケイ酸ランタン(La10Si6O27)にCo2+/3+を添加した材料を合成したLa10Si5CoO27-dが酸素を貯蔵放出する助触媒として機能し、これをPtとともにγ-Al2O3に担持することで、トルエンを120℃で完全分解できることも見出した。 このように、本研究期間を通し、イオン伝導の観点から様々な新しい環境触媒を創成してきた。その結果、従来触媒よりも低温での完全燃焼(メタン:280℃、トルエン:100℃、ホルムアルデヒド:20℃)を実現している。さらに、固体電解質分野で知られているアパタイト型ケイ酸ランタンの酸化物イオン伝導性に着目し、これが助触媒として機能することを発見した。
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