研究課題/領域番号 |
17K14813
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
長谷川 拓哉 高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 助教 (30793690)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 蛍光体 / エネルギー移動 / バナジン酸塩 / 母体発光 / 結晶構造 / 八面体結晶場 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,遷移金属のCT遷移特有の可視光応答性,特に青色吸収に着目し,その励起エネルギーを希土類金属イオン,とりわけEu3+に移動させることで可視光応答可能な新規蛍光材料の開発である。初年度である平成29年度に実施された研究成果は下記の通りである。 (1)遷移金属からなる可視光吸収を示す母体結晶の探索と合成 まず,可視光吸収を示すことが期待される遷移金属イオン(V5+,Mo6+,Ce4+,W6+)を含む無機結晶を無機結晶データベースから抽出し,希土類金属と置換可能な物質群を選定した。これにより,約1500種を超える無機化合物がピックアップされたが,結晶構造種などから,約100種程度まで大別された。大別されたこれらの100種程度の結晶構造種から,優先的に6配位または5配位をとる遷移金属ユニットを含有する化合物の合成に取りかかり,特に,6配位のモリブデン酸塩やバナジン酸塩において青色を含む長波長吸収を持つ材料を発見した。さらには,5配位を持つバナジン酸塩においては緑色の吸収を持つ材料が幾つか見つかり,遷移金属の配位数や配位環境が吸収スペクトルに大きな影響を与えることが示唆された。 (2)遷移金属を含む蛍光性新規化合物の合成 5配位や6配位のバナジン酸塩においては,強い可視光吸収を持つことが示唆された一方で,バナジウムの最も普遍的な配位数である4配位のバナジン酸塩においては,360 nm程度の波長を吸収端とする近紫外吸収が見られた。これらのバナジン酸塩はそれ単独で発光する母体発光を示した。特に,ガーネット構造を持つLiCa3MgV3O12が,近紫外光に強い吸収を持ち,青色発光を示す材料であることを見出した。ガーネット構造をもつバナジン酸塩は多く知られているものの,これまでの化合物では,緑色から黄色にかけての発光のみが知られており,本研究において青色光を示すことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の目標の大部分は,母体結晶の選定と合成にある。実施した初年度の内容の多くは母体結晶の探索に比重を置き,可視光吸収を持つ遷移金属化合物の構造的特徴の傾向を得ることができた。特に,バナジン酸塩においてはバナジウムの配位環境が直接的に化合物の可視光吸収に影響を与えることを示唆することができた。以上の理由から概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度以降は,初年度でピックアップした化合物から,可視光吸収が期待できる配位環境を持つ化合物の合成を引き続き検討し,Eu3+の固溶を行って,エネルギー移動の可否を検討する。さらに,データベースにはない新たな可視光吸収を持つ遷移金属化合物の合成を通し,可視光応答可能な蛍光材料の合成を目指す。さらに,理論的な解析を駆使し,蛍光体母体の設計指針の構築につなげる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は,電気炉の購入を平成29年度内に行う予定であったが,試薬類または消耗品の購入を優先した。結果として,電気炉を使用せずとも可能な研究のみでも年度内は十分であった。ただし,電気炉は本研究内ではもちろん必要不可欠な備品であり,30年度内に購入し,計画に見合った研究を遂行するため,次年度への繰り越しが必要である。
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