研究実績の概要 |
本研究では、工業化に適したフッ素フリーMOD法と呼ばれる溶液プロセスを用いて、希土類系高温超伝導体(RE123)薄膜の組織制御と高特性化を追究した。ハロゲン元素として塩素(Cl)もしくは臭素(Br)を添加することでRE123と格子整合性の極めて高い酸化ハロゲン化物(Ba2342)が薄膜中に生成し、RE123の結晶性および配向性が大いに改善することを見出した。 単結晶基板を用いた基礎的な研究においては、ClもしくはBrとともにZr,Sn,Hfといった金属を微量に共添加することによって大幅に臨界電流特性を改善することに成功した。特にBrとの共添加が有効であり、従来の無添加のフッ素フリーMOD法RE123薄膜の特性に比べて、磁場中臨界電流特性の指標であるピンニング力密度として最大で3倍以上の改善を達成した。 さらに、実用化を視野に入れた長尺化可能な金属基板を用いた研究にも取り組んだ。フッ素フリーMOD法において1μm以上の厚さの薄膜は報告例がないが、本研究で明らかにしたハロゲン添加を行うとともに成膜条件を詳細に検討することによって最大3μmまでの厚膜化に成功した。液体窒素温度における臨界電流値(Ic)は、フッ素フリーMOD法ではこれまで100A程度が最大であったが、本研究において当初の目標を超える210Aを達成した。プロセスを最適化することで、今後さらなる厚膜化ならびに高Ic化を見通せる段階に達しており、フッ素フリーMOD法を用いて低コスト実用線材が開発可能であると示すことができたと考えている。 以上の成果に関して、学会発表、論文発表を行った。
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